夕食も済んで、お風呂の時間。いつものようにくのたま長屋のシナ先生の部屋に向かっていたら、パタパタと足音が聞こえた。それに続いて現れたのは、寝間着姿のくのたまの女の子達。こんな風に会うことが何度かあったので、彼女達とも友達だ。

「あっ、なまえさん!」
「こんばんは〜」

先頭にいたトモミちゃんとユキちゃんが駆け寄ってきた。にゃん、と挨拶を返すと、ユキちゃんが叫んだ。

「やだ、かわいーい!」

え、な、何、急に。ちょっと照れていたら、ユキちゃんはわたしの首を指さしていた。ああ、なんだ、リボンのことね。

「ほんとだ!これって、春新色ですよね?すっごい可愛い!」
「前にしてたのも冬の限定色だったし、なまえさんってオシャレ〜!」
「いいなあ、あたしも買おうか迷ったんです!やっぱり、こうやって見たら可愛いなあ、買っちゃおうかな!なまえさんとお揃いだし!」
「じゃあ明日の授業が終わったら町まで行く?」
「あっそれならあたし、櫛が欲しかったの!買っちゃおー」
「あたしもあたしも!町で買いたい物があったんだー」
「ねえねえ、新しく茶店ができたのは知ってる?そこにも行きたいんだけど」
「えー、素敵!行きたい!」
「じゃあ決まり!」
「あとね、峠の和菓子屋さんで季節限定のお菓子が出てるって食堂のおばちゃんが言ってた!」
「じゃあそれ、わたし達とシナ先生の分も買って、お土産にしましょうよ!」
「さんせーい」

だんだんリボンから会話が逸れている。そして話し出したら止まらない、正に女の子。わたしもリリーと話が盛り上がるとこんな風になって、よくジェームズやシリウスを置いてきぼりにしていた。でも今回は、わたしが置いてきぼりだ。ぽかんとしていると、わたしの存在を思い出したトモミちゃんが、ぐりんとこっちを見る。

「ごめんなさいなまえさん、勝手に盛り上がっちゃって!」
「お土産、もちろんなまえさんにも買ってきますからね!」

そういう話じゃない、けど有り難く頂くことにして、わたしは頷いた。限定、という言葉に弱いのも、女の子の習性なのだ。

「じゃあなまえさん、おやすみなさーい」
「また明日、楽しみにしてて下さいね、お土産!」
「にゃーん!」

大きく手を振ってくれるみんな。しかし曲がり角に差し掛かると、またペちゃくちゃと止まらないお喋りが始まる。ガールズトーク、恐るべし。





シナ先生の部屋の前に立つと、何も言わなくても気配に気付いて、シナ先生が出てくる。最初はびっくりしたけど、今はそんなこともない。

「今日は遅かったのね」
「にゃおん」
「あら、トモミさん達に?それなら仕方ないわね、あの子達はお喋りが大好きだから」

苦笑いする、若い方のシナ先生。

「もしかして、その新しい髪紐の話?」
「にゃん?!」
「当たりね。あの子達はいつもお洒落とお菓子と恋の話ばかりしてるから」
「にゃあ…?」
「あら、どうしてわかったの、って?」

シナ先生はちょっと屈んで、ウインクしてみせた。

「私だって女の子だもの」

なあるほど。女の子の観察力も、舐められない。


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