「あれ、何か足りない」

兵助が、ハチに包帯を渡していたわたしを見て言った。みんなの視線がこっちを向く。

「本当だ、何か足りない」
「あ、首の飾り紐がない」
「それだぁ」

三郎、ハチ、雷蔵が言った。みんな、実習から帰ってきてからリボンについて触れなかったけど、ちゃんと気付いてたのね、なんて今さら思う。

「ていうかあの髪紐、誰にもらったんだ?私、結構気になってたんだが」
「うん、思ってた」
「にゃん、にゃーお」

これまた今さらだけど、みんなに説明をする。

「へえ、善法寺先輩と食満先輩が?」
「なんか意外だな」
「で、なんで取ったんだ?」
「にゃあ!にゃあ!」
「ええ?くせ者?」
「あー、タソガレドキ城の」
「だから遅かったのか」

なんだ、雑渡さんは有名人なのか。そんなによく入ってくる人なのかな。しかし、それでいいのか忍術学園。卵といえど、忍者が大勢いるのに、アッサリと入られてしまって。

「でもあのタソガレドキの組頭は相当な凄腕忍者なんだよ。六年生も敵わないようなあいつに、五年生の私達が敵うはずがないだろ」

三郎の言い訳に、みんなうーんと深く頷いた。そんなに凄い人だったのか。確かに、体中に巻かれた包帯は、たくさんの場数を踏んだ証拠だったのかもしれない。忍者のことはよくわからないけど、やっぱり隙がないみたいな感じがした、気がするし。

「ねえなまえ、首寂しくない?」
「にゃん?」
「今度は私達が買ってやろうか」

兵助がわたしを撫でた。

「にゃあ、」
「遠慮しなくていいよ。なんか今の話聞いたら、私達もちょっと悔しいし」
「んじゃあ、町行くか?」
「いいねそれ」

あれよあれよと話が決まってしまった。なんだか申し訳ないけど、みんなが楽しそうだから、いいかな?





「なあ、なあ、どれがいい?」
「前にしてたのが結構深い色だったしな。もうじきに冬も終わるし、明るい薄桃色にするか?ほらこれ、新色だぞ」
「にゃん…」
「詳しいって?そりゃあ私は、変装の名人、鉢屋三郎だからな」

女装もするなら常に女性の流行も知っておかなければ、と三郎は得意げに笑った。こういうところ、三郎は妙に生真面目だなあ。でもそのこだわりが、名人と言われる所以なのかな。結局その新色のリボンを買ってもらって、ちょっと町を見て回ってから、わたし達は学園に戻った。いつものようにハチと兵助の部屋に戻ってから、雷蔵がリボンをわたしの首に結んだ。

「わあ、似合うよなまえ!」
「やっぱりちょっと雰囲気変わるな!」

ハチにぐりぐりされる。自分では見えないからあまりわからないけど、みんなに口々に言われると、そんなに変わったかな?と思ってしまう。きっと五年のみんなは、毎日わたしのことをよく見てくれているんだな。他の人も、わたしのこんな小さな変化に気付くだろうか。


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -