竹谷がそのネコを見つけたのは、忍術学園の門の近くの茂みだった。その日も、飼育小屋から脱走した伊賀崎の飼っている毒虫を捕まえる為に学園中を探し回っていた竹谷は、最後の一匹を探している最中、それを見つけたのだった。

毛並などから、野良猫ではなく飼い猫だったであろうことは、すぐに予想できた。でも見たことのない猫だったので、恐らく学園の外部の人間が山に捨てて、自力で学園まで辿り着いたのだろう。そっと猫を抱き上げると、猫は気を失っているのか、ピクリともしなかった。

「大丈夫か?」

竹谷が優しく声をかけるが、反応はない。一度飼った動物を途中で捨てるということを許さない竹谷は、その猫を見ていると、とても悔しくなった。同時に、この猫を守ってやろうという気分になった。そうしてその猫を抱いたまま部屋に戻ろうとしたとき、バタバタと人が走ってくる音がした。振り返ると、伊賀崎孫兵だった。

「竹谷先輩、ジュンコいました!」

そう言って毒蛇に頬擦りをする伊賀崎を見て、竹谷は自分が毒蛇探しを忘れていたことを思い出した。

「お、おお、よかったな!もう逃がすなよ」
「はい!」

ジュンコと会話しながら、幸せそうに去っていく伊賀崎を見送って、竹谷は再び部屋に向かった。




「おかえりはっちゃん、毒虫全部見つかったの?…って、何持ってるの」

部屋に戻ると、同室の久々知が課題をやっていた。

「ネコ」
「いや、見たらわかるけど…」

竹谷が布団を敷きながら、答える。久々知は課題をやる手を止めて、布団を敷く邪魔にならないように、机をはじに寄せた。

「なんでネコ?」
「偶然見つけた。捨てられたみたいなんだよ」

竹谷のその言葉は、飼うから、という意味を含んでいた。久々知はひとつ、はぁと大きなため息をついた後、布団に近付いた。

「どうするんだよ?」
「あんまり考えてない」

猫を寝かせて、へらっと笑う竹谷に、久々知はもうひとつため息を吐いた。それから、雷蔵達にも相談しよう、と言って、二人を呼ぶために部屋を出ていった。





×××
久々知と竹谷は、お互いに同室だった人が学園を辞めていったので、仲いいし一緒にしちゃおうか、というノリで同室になった…的な。ろ組に雷蔵と三郎がいるから、竹谷の部屋に久々知が来たってイメージです…


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