「なまえは日本の正月って知ってるか?」
「にゃん?」
「日本ではなー、正月は初詣に行くんだぞ」

ぐりぐり、三郎に頭を撫で回される。今年の初撫でだ。みんな年越しの瞬間はお酒とか飲んで、受かれて踊ったりしていたけれど、しばらくすると疲れて眠ってしまい、翌日元日の9時頃起きた。

「初詣って知ってる?」
「にゃーん」

首を横に振る。わたしは三郎の手から雷蔵の腕に移された。

「神社にお参りするんだよ」
「あとおみくじひいたりな!」
「はっちゃん毎年大吉だもんなぁ」

雷蔵の手から、兵助の膝に移される。

「そういえば、食堂のおばちゃんがお雑煮作ってくれたって」
「美味そう!早く行こうぜ!」

最後に、兵助からハチの肩に移されて、そのまま部屋を出た。外は雪が薄く積もっている。道理で、寒いと思った。わたしがぶるっと体を震わすと、ハチが腕の中にわたしを納めて、ぎゅっとしてくれた。

「あったかいだろー」
「にゃあ!」
「こうすると俺もあったけーんだ、なまえの体ぽかぽかしてるからさ」

ハチにならこういうことされてもいいかなと思う。おかげでぽかぽかで食堂に到着した。

「あら、今日は遅かったわねぇ、五年生のみんな」
「昨晩はしゃぎすぎてしまって」
「ふふ、そうだと思ったわ。ちょうど一年生の子達が食べ終える頃だから…」
「先輩あけましておめでとうございまーす!」

おばちゃんの言葉が終わるか終わらないかとタイミングで、どわーっとは組の子が溢れて来た。

「なまえさん今年もよろしくね!」
「にゃん!」
「三郎先輩お年玉下さい!」
「持ってないよ!」
「竹谷先輩お年玉下さい!」
「よしよし、じゃあまんじゅうやるぞ」
「わーい!」
「ハチなんで持ってんだよ」
「昨日の酒盛りの余り」
「よーしみんな、雪合戦やろー!」
「わーい!」

は組の良い子達は嵐のように去って行った。

「一年生は元気だなー」
「兵助おっさんくさいぞ」
「あったかいお茶持ってきたよ」
「お、ありがとう雷蔵」
「お雑煮もできたわよー」

おばちゃんの言葉に、ハチと雷蔵が取りに行ってくれた。いつも動いてくれるのはこの二人だ。
「なまえには熱いか?」
「にゃー」
「よし、優しい三郎様がふーふーしてやるよ」

わたしが思いっきり眉間にしわを寄せてみせると、三郎はちょっと寂しそうな顔をした。ふざけて言った癖に傷つきやすい。

「冷めるまで蜜柑食べてるといいよ、なまえ」
「にゃーん」

雷蔵から蜜柑をもらう。甘いくて美味しい。

「やっぱりおばちゃんのお雑煮美味い!」
「食べたら神社行くか」
「なまえ、そろそろいいぞー」

あー、ほのぼのとしてる。食堂は四年や三年を中心に騒がしいけど、わたし達のテーブルはゆったりとした空気が漂っていた。昨晩はしゃいだからだろうか。と、廊下の方から声が聞こえて、六年生が入って来た。

「お、なまえと五年生じゃないか」
「にゃん!」
「俺らはオマケですか」
「そうだよ仙蔵、その言い方はみんなに失礼だよ…っうわあ!」

仙蔵先輩に注意しようと一歩進み出た伊作先輩が、何もないとこで転んで、三郎のお雑煮をぶちまけた。

「あー!俺の!」
「ごっごめん鉢屋くん!」
「ははは!やるな伊作」
「伊作、今年初不運か?」
「いや、昨日の夜に酒をこぼしたよ、布団に」

留三郎先輩がウンザリした感じの顔をした。相変わらずだ。今年も伊作先輩は絶不調らしい。

「あの、俺らもう行くんで」
「そうか?じゃあなまえは置いていけ」
「嫌っすよ!」

三郎がわたしを抱えて、他の三人を押して、急いで食堂を出た。

「立花先輩、なまえのこと妙に気に入ったみたいだな…」
「なまえ可愛いからな!」
「ハチはまたそういうことをサラッと」
「えー?兵助も思うよな?」
「え?あ、ああ…」
「あはは、兵助照れてる」

雷蔵に笑われて、兵助は顔を隠した。ハチも三郎も笑っている。

「さっさと外出許可証もらいに行くぞ!」
「はいはい」
「よっしゃ、今年も大吉出すぞ!」
「僕も大吉がいいなぁ」
「にゃーん」
「なまえもおみくじする?」

雷蔵がにっこり笑ったので、わたしもにっこり笑い返した。お正月はいつも両親と一緒にイギリスだったけど、日本で過ごすのも素敵だなぁ。いや、このみんなと過ごすから、楽しいんだろうか。とにかく、今年もいい年になりますように!




2010.01.01
ハッピーニューイヤー!

時期的には一緒シリーズの後、言葉のお勉強よりも前です


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