朝食の後は、みんな、授業があるそうだ。そりゃ、学校なんだもんね。

「なまえ、適当に散歩してていいからな」
「気を付けて散歩しろよ!」

少し心配そうにするハチと兵助を見送ってから、わたしは部屋でごろんと寝転がった。みんなの授業がある時間に、自分の授業がないっていうのは、学生としては幸せだけど、不思議な気分だ。ホグワーツなら、今日は木曜だから…ああ、一限目は魔法史の授業かぁ。ジェームズ達は、どんな気分で授業を受けているだろう。ちゃんと寝ずに、わたしがどうなったかを考えてくれているかしら?まさか、室町時代の日本の、忍者の学校でごろごろしてるとは、思わないだろうな。内心、くすりと笑ったその時だった。突然、手裏剣が、障子の隙間から、部屋に飛び込んできた!

「?!」

わたしのしっぽすれすれに飛んでいったそれは、壁に刺さって止まった。何で、手裏剣が?わたし、何かに狙われてる?!バクバクする心臓をしずめつつ、そろりと障子の隙間から外を覗くと、一人の男の人がバタバタと走って来た。わたしには、気付いていないみたいだ。「うわぁ、またやっちゃった〜」

その人はきょろきょろ周りを見ると、部屋に入ってきて、手裏剣を回収した。悪い人ではなさそうなので、わたしは後ろからにゃお、と声をかけた。男の人はビクッとして振り返って、わたしを見た。

「もしかして、きみ、当たった?」

手裏剣を見せながら、聞いてくる男の人。胸のところに、事務と書いた布が貼り付けてあった。わたしが首を横に振ると、事務の人はほっとしたような表情をした。それから、屈み込んでわたしの頭を撫でる。

「驚かせて、ごめんね、猫ちゃん」

へらっと笑ってそう言う事務の人は、なんとなくかわいかったので、驚かされたことは許してあげよう。どうして手裏剣を投げたのかも聞きたかったけど、事務の人はすぐに立ち上がって、じゃあねとわたしに手を振った。わたしは頷いて、しっぽを振った。わたしは喋れないから、ゆっくり字を書くのを待ってくれる人としか、会話はできない。事務の人は、きっと忙しいんだろう。事務の人が見えなくなって、わたしは再び転がった。ごろごろしながら、何をしようかと考えていると、ひょこっと障子から頭が覗いた。事務の人が戻ってきたのだ。わたしはごろんと転がって立ち上がる。

「ねえ、きみ僕の言葉わかるの?」

こくんと頷くと、すごーい!と目をキラキラさせた。気付くの、遅いな。マイペースな人だ。

「動きも、人間みたいだね〜。すごいや」

人間ですから、と言いたいけど、生憎書くものが何もない。

「僕はね、小松田秀作っていうんだよ」

一声鳴いて、頷く。秀作さんはにっこり笑って、じゃあ僕は仕事があるから、またね、と部屋を出て行った。なんだかふわふわした人だったな。


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