バイトがある綱海とは別々の帰り道。夜ご飯の買い物にスーパーに寄ってるときに、ふと、兵太夫くんは鍵を持ってなかったことを思い出した。慌てて、今かごに入っている分の会計を済ませて家に向かったけれど、兵太夫くんはいない。鍵を開けて部屋に入ると、郵便受けにメモが入っていた。

「友達の家にあそびにいってきます」

鍵がないから遊びに行ったのか、元々行く約束だったのか。どっちにしても、ごめんね、兵太夫くん。わたしはメモと買い物袋の中身を机に置いて、再びスーパーに向かった。




急いで帰って来たら、アパートの下で兵太夫くんと一緒になった。さりげなく買い物袋をひとつ持ってくれた兵太夫くんに感動。

「ごめんね、兵太夫くん」
「え、何が?」
「鍵開いてなかったでしょ?」

階段を上って、部屋を開けるために取り出した鍵をちゃりちゃり揺らす。兵太夫くんは、ああ、と納得した後、気にしてないと言った。ちなみにわたしがこの合鍵をもらったときは、綱海もわたしもお互いに恥ずかしいくらい、ガチガチに緊張してしまっていた。意識してしまうと余計に照れてしまうのだ。

「ところで、兵太夫くんの友達ってどんな子?」

わたしが鍵を開けながら聞いたら、兵太夫くんはちょっとびっくりした顔でこっちを見た。あれ、聞かない方がよかったのかな?いやいやでも、仲良くなるための日常会話のつもりだったんだけど。それにきっと、両親と別れても離れたくなかったっていう、すてきな友達のところだろう。ぜひ聞いてみたい。わたしが兵太夫くんが話出すのを待っていると、兵太夫くんはちょっと照れた感じで口を開いた。

「あ、ええと、三ちゃんっていう、んだよ」
「三ちゃん?可愛いね」
「三ちゃんは男だよ、夢前三治郎」
「あ、そうだよね、ごめん」
「ううん」
「三ちゃんとはよく遊ぶ?」
「うん」
「じゃあ今度はうちに呼んで、わたしにも紹介してね」

わたしがそう言えば、兵太夫くんは嬉しそうに笑って、頷いた。

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テーマ「人外ファンタジー」
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