わたしがお昼ご飯を作り始めた頃。兵太夫くんは荷物の整理が終わったのか、ロフトから下りてきて、テレビをつけた。ちゃぶ台の上でごちゃごちゃとノートを広げていた綱海も、テレビを見る。ぱちぱちとチャンネルを変えていく音は、単調なアナウンサーの声の番組で止まった。

「ニュースかよ!兵太夫、渋いな!」
「条介にい、大学生でニュースが渋いとか言ってていいの?」
「うっ…いいんだよ、兵太夫はもっと子供っぽくしろよなー」

くすくす、と綱海じゃない笑い声が聞こえてきた。なんだ、兵太夫くんもちゃんと笑うんだ、なんて当たり前のことに少し感動してしまった。



「ごはんできたよ」
「お、オムライスじゃん!」

とん、とお皿をちゃぶ台に置くと、つまらなそうにニュースを眺めていた綱海の顔が明るくなった。兵太夫くんはまた無表情に戻っていたけど、黙ってスプーンを手に取って、食べ始めた。

「ど、どうかな、兵太夫くん」
「…えーと、」
「うわっ!うめぇな!なまえ、こんなに料理うまかったのかよ!」

せっかく兵太夫くんが話しかけたのに、綱海の声で遮られてしまった。褒めてくれたのは嬉しいけど、タイミング悪いなぁ。兵太夫くんはまた黙って、オムライスに手をつけた。まあ、不味くはないみたいだから、いいか。




お皿を洗っていたら、後ろに人の気配を感じた。振り返ると、ちょっとそわそわした感じの綱海だった。

「お前料理うまいんだな、知らなかったぜ」
「そ、そうかな、ありがとう」
「おう!あ、あとさ…なんか自分ちのキッチンに彼女が立ってるって、照れるな」

ほっぺをかきながら、照れ臭そうに笑って言った綱海。こんなに褒めてもらえるなら、せっかくだし、今度お弁当とか作ってみようかなぁなんて思ってしまった。

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テーマ「人外ファンタジー」
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