わたしと綱海はいわゆる、腐れ縁というやつだった。小さい頃から家が近所で、小中高と同じ学校で、なんと大学まで同じというのだから笑っちゃう。ただ、実家のある島とは別の島の大学に通っているので、わたしはその島に住んでいた祖父母の家に、綱海はアパートを借りてそこに、下宿していた。実家では、お互いの家まで徒歩10秒だったけれど、今は自転車20分だ。そんな綱海から、一緒に暮らしてくれと言われたのは、ようやく新生活に慣れ始めた5月頃のことだった。

元々仲が良すぎたせいで、綱海のことが好きだと自覚したのは高校に入ってから。別の人と付き合ってみたら、なんか違うなあと思って、ようやく気が付いた。でもそんなことを言い出す勇気なんてなくて、何も進展しないまま卒業を迎えるんだろうなと思っていたら、高3の夏に突然、綱海の方から好きだと言われた。嬉しかったけど、本当に元々仲が良すぎたので、特別な変化はなく、友達以上恋人未満みたいなフラフラした関係のまま、わたし達は大学生になった。なので、わたしには綱海の言葉は結構な衝撃だった。わたしの気持ちを表情から悟ったらしい綱海は、慌てたように手を振った。

「いや、別に、変な意味じゃなくてな!実は今度、いとこがうちに来るんだ」
「それと何の関係があるの?」
「それが、ただ遊びに来るんじゃなくて、一年間うちで預かるんだよ」
「ええ?!」
「両親が出張で海外に行かなきゃならなくなったらしいんだけど、そいつは友達と離れたくないから日本に残るって言ってよー」
「それでどうして綱海の家なの?」
「多分、俺が断ると思ったんじゃねぇかな。俺も最初は断ろうと思ったけど、いとこがすげぇ頼み込んできたから、断れなくてさ。でも俺料理できねぇから、さすがに小4で晩飯カップ麺だけとかは、まずいだろ」
「綱海、そんな生活してたの!」
「まあ、たまにな!」

なるほど、綱海はその子にご飯を作ってあげるために、一緒に暮らそうと言ったのね。腰を90度も曲げて頼まれたら、断れない。何より、綱海と一緒に暮らせるのは嫌じゃなかったし、むしろ嬉しい、かも。わたしがそう伝えると、綱海はニッと笑った。

「助かるぜ!じゃあ、早速引越しの準備だな!」
「え、その子はいつ来るの?」
「明日だ!」

そんな突然すぎる、というわたしの言葉は綱海には届かなかったらしい。綱海はわたしの手をとると、祖父母の家に向かって歩き出した。

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