そういえば、わたしと綱海は大学で、サッカーのサークルに入っていた。けれど、兵ちゃんが家に来てから、忙しくて全く顔をだせずにいたのだ。元々バイトもしたかったので、活動が週に二回の緩めのサークルに入ったのだけど、やっぱり一ヶ月行かなかったのはとても申し訳ない。ということで、今日は久しぶりに綱海と二人、サークルに顔を出した。先輩達は歓迎こそすれ、怒りはしなかった。それでも一応事情を説明したら、当然のように冷やかされた。

「今日は参加してくのか?」
「はい!そのつもりです」
「おー、イナズマジャパンの実力を生で見れるな」
「そんなん、元、だぜ!ここんとこやってねーから、どうだろうな」

先輩にも平然とタメ口の綱海。ここんとこやってねーって、ついこの間ゴキブリ退治で見事な腕前を見せたくせに。サッカーを始めて一月もしないのにFFIの日本代表に選ばれた綱海の運動神経は、相当なものだ。しばらくやらなかったくらいでは、全然衰えたりしないのだ。

適当に着替えて、クラブハウスから少し離れたグラウンドに向かう。このサークルはみんなでワイワイサッカーするのが目的なので、公式戦のための厳しい特訓はないし、女の子も結構いる。こうして女の子も一緒になってやっていると、なんとなくキャラバンの時を思い出す。宇宙人と戦うような実力はなかったので、あの時はマネージャーだったけれど、やっぱり実際にプレイするのが一番好きだ。もしまたみんなで集まれたら、今度はわたしも混ぜてもらって、サッカーがしたいな。

グラウンドに到着して、適当に体をほぐし、チームとポジションを決める。わたしと綱海は違うチーム。綱海はディフェンス、わたしはミッドフィルダー。少し作戦会議をしてから、試合開始だ。こっちのチームがパスを繋いで攻め込むけれど、綱海があっさりとボールを奪って、必殺ロングシュート。キーパーをしていた同級生の必殺技での対抗も虚しく、ボールはゴールに突き刺さった。

「イエーイ!先制だ!」
「やっぱスゲーな綱海!ブランク感じないぞ!」
「でもちょっと、ワンマンプレイなんじゃない?」

わいわい囲まれ調子に乗りきった綱海に、ちょっと釘を刺す。

「はは、わり!久しぶりにグラウンド立ったら楽しくてさ!」

反省の色は少しも見えなかったけれど、綱海らしい。チームメイトも笑いながら、最初から飛ばすと後半バテるぞ!と綱海の頭をぐしゃぐしゃした。大海原中で本気でFF優勝を目指して特訓をしていたのも楽しかったけれど、好きなサッカーを好きな時に好きなだけやれる今も、すごく楽しい。

結果は3対1で綱海のチームの勝利。久しぶりに動き回ったら、汗はたくさんかくし、足はがくがく。でもとても楽しかった。着替えて帰る前に、先輩達がたくさんお菓子を持たせてくれた。次来るときは連絡してくれれば、うちで採れた野菜持ってきてやるよ、だとか、それなら俺は魚釣ってきてやる、だとか、実家から送られてきた米分けてやるな、だとか。親切なすてきな先輩達。わたしと綱海は何度もお礼を言って、お菓子のたくさん入った袋と教科書の詰まった鞄を持って、大学を出た。

「楽しかったな!」
「うん!また暇ができたら行きたいね」
「こんなに菓子もらったら、しばらくはなくならねーぞ!」
「兵ちゃんスナック菓子とか食べるかな?」
「あんま食ったことなさそうだけど、食うんじゃねーか?」

そろそろ夕日が沈む時間。兵ちゃんがお腹を空かしていたらいけないから、急いで帰ろう。

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