人見知りの兵ちゃんが、数時間一緒にトランプをしただけで、土方くんになついていた。やっぱり、土方くんにはそういう才能があるんだろうな。土方くんも加わった大富豪では、そんなに負けることもなく、普通に盛り上がった。
「俺の負けかよー!」
「なまえねえが負けなくなってきたね」
「わたしって実は頭脳派だったのかも!」
「運がないだけだろー」
トランプを切りながら、綱海が口を尖らせた。最下位、大貧民になった人が、切って配る担当になるのだ。
「なんかいいな、綱海ん家」
わたしの出したジュースのコップ片手に、土方くんが笑った。
「何がだ?」
「なんつーか…ほのぼのとしてるよな、空気が」
「土方くん家は嵐みたいだもんね」
「まーな、うちと比べたらどこでもほのぼのとしてるか」
また豪快に笑う土方くん。でも、言ってることはなんとなくわかる。綱海と兵ちゃんといると、ほっとする、っていうか。まだ一ヶ月弱しか一緒にいないのに、本当に家族みたいな、安心感があるのだ。
「ねえ、次は七並べしようよ」
「お、いいなぁ!大貧民、配ってくれよ」
「大貧民って言うなよなー平民」
七並べか、あんまり強くないんだけど。土方くんは人がいいし、綱海も馬鹿正直だし、止めそうなのは兵ちゃんかな。わたしが兵ちゃんをじっと見ると、気付いた兵ちゃんににんまりと笑い返された。止める気満々か!
「兵ちゃんには負けないように頑張ろう」
「そんなこと言っていいの?なまえねえ」
「配れたから始めるぞー」
バチバチと火花を散らすわたし達に、綱海が呑気な声で言った。配られたトランプを見ると、悲しいことに、はじっこの数字ばかり。絵札やAや2は、大富豪の時にきてほしかったよ。兵ちゃんをちらっと見れば、にやっと笑っていた。
「僕、勝ちそう」
あーあ、七並べも所詮は運勝負。兵ちゃんに力のない笑顔を返した。わたし、負けそう。