亜熱帯気候である沖縄は、5月中旬からすでに梅雨である。本土がそろそろ梅雨の時期に突入しようかという6月は、沖縄の梅雨の終わり頃。しかし実際、ニュースでは本土の梅雨入りのことばかり取り上げられて、あんまり終わり頃という気分でもない。梅雨は暑いのにジメジメしていて、一番いやな季節かもしれない。今日は土曜日なので、家で綱海と兵ちゃんと三人、のんびりしていた。否、白熱した勝負を繰り広げていた。トランプで。きっかけは、わたしが近所の福引きで、5等のトランプを当てたことだった。参加賞のポケットティッシュの一つ上、賞の中では一番ショボいものだったけど、参加賞よりいいものが当たったのが嬉しくて、帰って早々、わたしは二人に自慢した。すると綱海が意外な食い付きを見せた。

「ババぬきやろーぜ!ババぬき!」
「あ、いいね、ババぬきとか久しぶりだなぁ」
「条介にいは弱そう」
「なんでだよ?!」
「すぐ顔に出るから」
「あー、なるほど!」
「それ言ったらなまえもだろー」
「そんなことありませんー」
「僕はポーカーフェイスだから強いよ」
「何がポーカーフェイスだよ!ぜってー勝ってやるからな!」
と言うわけで始まったババぬき勝負、なんと現在結果はわたしの四連敗である。悔しすぎる!

「なまえねえ、弱いね…」
「な、なんでこんなに勝てないの…?」
「ま、運がないってことだな!」
「…もう一回!」
「えー、またババぬき?さっきで最後って言ったじゃん!僕大富豪やりたい」
「神経衰弱にしようぜ!」
「バーバーぬーきー!」
「あーもーわかったよ!あと一回な」

わたしの叫びに、綱海が渋々折れた。

「いいよな兵太夫」
「あと一回やったら大富豪ね」
「うん!ありがと兵ちゃん!」

綱海がトランプをよく切って、配る。三人でのババぬきは、スピーディーですぐ終わる。負けたわたしからスタートして、黙々とトランプを取る、捨てる、取る、捨てるを繰り返す。

「あーがり!」

一番に上がったのは兵ちゃんだった。見せつけるように、ハートとスペードの3をゆっくり捨てる兵ちゃん。これでわたしと綱海の一騎討ち。ババは綱海で、わたしの手札はダイヤのクイーン。

「わりーな、俺負ける気がしねぇわ!」
「うるさい綱海、勝負!」

綱海が差し出した二枚のトランプ。ぴょこっと飛び出している右のやつと、引っ込んでいる左のやつ。綱海の顔をチラ見したら、ニヤニヤしてわたしの顔を見ていた。

「…こっち!」

言いながら、左を引き抜く。トランプを裏返すと、ジョーカーのピエロが笑っていた。それを見て、兵ちゃんが吹き出す。

「なまえねえ、やばいパターンだね」
「だ、大丈夫、今度こそ勝つから…!」

わたしは隠してトランプを切ってから、綱海の前に差し出した。ぴょこっとさせた方がババ、引っ込めた方がダイヤのクイーン。綱海は馬鹿正直だから、ぴょこっの方を選ぶ、ような気がする!

「…こっちだな!」

綱海がぴょこっの方に手を伸ばした。よし、と思った瞬間、綱海が手を横にずらした。抜き取られていくダイヤのクイーン。ギュッと親指に力を入れたけれど、すでに遅く、わたしの手の中にはニヤニヤするジョーカーだけが残った。

「あ、あ…」
「よし、上がり!」

綱海がクイーンをトランプの山の上に投げた。わたしはジョーカーを握ったまま、崩れるように倒れる。

「ある意味すごいよなまえねえ」
「ほんとだよな!そんだけ運温存してたら、宝くじとか当たるんじゃねぇ?」

あーうるさいうるさい。綱海がわたしの手からババを引き抜いて、全部混ぜたトランプを切っていく。これで勝てればいい気分で大富豪に挑めたのに。ていうかもう少し人数いたらよかったかもしれない。と、思っていたら、タイミングよくチャイムが鳴った。

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