綱海と兵太夫くんとの共同生活を初めて、二週間経った。もうわたしも二人も、この生活にだいぶ慣れてきた。兵太夫くんはわたしと綱海のバイトの予定を考慮して遊んだりしてくれていたけれど、まだ友達を家に呼んだことはなかった。三ちゃんという友達の話を聞いてから、ずっと会ってみたいなぁと思っていたわたしは、密かに兵太夫くんが友達を招待するのを楽しみにしていたのだ。

しかし昨日初めて、兵太夫くんが、明日家に友達を呼んでもいい?と聞いてきた。明日は綱海が家庭教師で、わたししかいない日だ。わたしはもちろん、綱海からもOKが出た。そして今日、わたしはちょっとワクワクしながら、お菓子とジュースを買って家に帰った。兵太夫くんはわたしより先に帰っていて、宿題をやっていた。

「おかえり、なまえさん」
「ただいま兵太夫くん!お友達は?」
「多分もうすぐ」
「三治郎くん?」
「あ、うん、三ちゃん。名前覚えてたんだ」
「もちろん!」

わたしが笑ってジュースを冷蔵庫にしまっていると、ピンポーンと音がした。わたし達はピクンと反応する。兵太夫くんが立ち上がって、ぱたぱたと玄関に走った。わたしはキッチンから様子を覗く。

「三ちゃん、入って」
「おじゃましまーす」

兵太夫くんに誘導されて、部屋に入って来た三治郎くんと、目が合った。

「こんにちは、三治郎くん」
「こんにちは、おじゃまします、なまえさん!」
「あれ、名前…」
「兵ちゃんから、なまえさんの話よく聞くから」

にっこり、三治郎くんは笑った。とっても感じのいい子だ。

「三ちゃんでいいかな?」
「はい!」
「じゃあ三ちゃん、ゆっくりしてってね」
「ありがとうございます」

三ちゃんはにこにこしたまま頭を下げると、奥で待っていた兵太夫くんのところに走って行った。



二人が遊んでいる中テレビを見るのもあれなので、わたしはキッチンを片付けたり、夜ご飯の下ごしらえをしたりしていた。ちらっと二人の方を盗み見ると、楽しそうに話している。普段家にいる時と違って、兵太夫くんの表情はころころと変わった。きっと、素の兵太夫くんはああいう感じなんだ。まだ家で素でいられるほど慣れていないのかと思うと、ちょっと寂しかったけど、まあまだ二週間なのだ。時間はある。ゆっくり仲良くなって行ったらいいんだ。わたしは料理に使っていたボールを洗って片付けると、ジュースとお菓子を持ってロフトに上がった。

「お菓子とジュース、どうぞ」
「あ、ありがとうなまえさん」
「いただきまーす」

兵太夫くんはちょっと照れたような顔をして、三ちゃんはにっこり笑った。



あっという間に夕方になり、わたしと兵太夫くんは三ちゃんを見送りに玄関を出た。

「おじゃましましたー」
「うん、また来てね!」
「ありがとうございます!」

三ちゃんが後ろを向いて歩き出したので、わたし達は部屋に戻ろうとした。と、服が引っ張られて、わたしと兵太夫くんの間で扉が閉まる。

「なまえさん」
「あれ、三ちゃん?」
「あの、最近の兵ちゃんは前よりよく笑うようになったし、なまえさんのこととか、条介さん?のことも楽しそうに話してるよ」
「そ、そうなの?」
「兵ちゃんが楽しそうだと、僕も楽しいんだ。ありがとう、なまえさん」
「え、いや、どういたしまして?」

三ちゃんはもう一度にこっと笑って、走って行った。扉が開いて、兵太夫くんが顔を出す。

「なまえさん?」
「なんでもないよー」

緩む頬を押さえながら、わたしは家に入った。

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -