わたしはギクリとして、ポカンとしたヒートさんにちょっと隠れた。バーン様はちょっとばつの悪そうな顔をしている。

「バーン様どうしたんですか?」
「ばっ…バカいつまで喋ってんだ!もう始めるから呼びに行こうかと思ったところだ!」
「す、すみません!」

わたしはバーン様の剣幕に慌てて謝ったけど、ヒートさんはあろうことか、くすくすと笑った。バーン様がイラッとしたのがわかる。ヒートさんはちょっと笑ったまますみません、と言って、グラウンドに走って行ってしまった。イライラモードのバーン様と二人残されるのは怖かったので、わたしもそれを追おうとしたら、バーン様がわたしの肩を掴んだ。

「オイハニー!」
「ははははい!」
「ヒートと何話してたんだよ」
「いやっあのっ」

バーン様の話ですとは、恥ずかしくてとても言えない。しかし話を濁したりするのはバーン様を余計にイラつかせることになる。適当に別の話題を考えていたら、バーン様がわたしを睨み付けた。

「言えねぇような話か?」
「いえ、その…」
「じゃあ言えよ!」
「ば、バーン様の話を…!」

あーあ、言ってしまった。ヒートさんどうして先に行ってしまったんだ。わたしはさっきのヒートさんとの話を思い出して、顔が真っ赤になったのを感じ、うつむいた。よく考えたら、わざわざ練習場の外でバーン様の話って、陰口とか勘違いされないかな。いや、わたしに陰口を言う度胸なんかないのはバーン様も重々承知のはず。お願いしますこれ以上怒らないで下さいバーン様!

「お、俺の話だと?」

バーン様の声は怒ってると言うよりは驚いているようだった。あ、驚きで怒りが鎮まったかもしれない。わたしが恐る恐る顔を上げると、バーン様は固まっていた。そのバーン様の向こう側でヒートさんがわたしに手を振って、口パクで何か言っている。

(い、ま、き、け)

今聞けって、さっきの話だろうか。確かに今のバーン様は機嫌がいい訳でもないけど、あんまり怒ってる訳でもない。チャンス、なのだろうか。

「あああの、バーン様!」
「なっ、何だよ」
「どうしてバーン様はわたしをプロミネンスに引き抜いてくれたんですか?」

もう後戻りはできなかった。バーン様は珍しく、視線を宙にさ迷わせた後、ちょっと顔を赤くしながら、わたしを睨み付けた。

「お前がいた方がやる気が出んだよ!」

それだけ言うとバーン様は、練習再開だ!と背を向けてしまった。わたしがボケッとつっ立っていたら、ヒートさんが走って寄ってきて、ほらねと笑った。信じられない。バーン様がわたしを好きらしいことももちろんだし、あんなに怖いバーン様が可愛く見えたことも信じられない。もう訳がわからない。ただ、わたしがバーン様についてもっとよく知りたくなっていたのは確かだった。


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