わたしがプロミネンスに移って、一週間が経った。プロミネンスの練習時間はイプシロンより長く、イプシロンより厳しい。なので練習で疲れ果ててしまうわたしは、イプシロンのみんなに会いに行くこともできなかった。でもプロミネンスのみなさんは、結構わたしに優しくしてくれた。バーン様が集中的にわたしをパシリ扱いするので、同情してくれているのかもしれない。わたしは練習中でも、バーン様の命令があれば、そっちを優先するように言われていた。


必殺技の特訓の後、バーン様が一時休憩だとわたし達に指示した。わたしは、ベンチに向かう途中のヒートさんの腕を捕まえた。

「ひ、ヒートさん!」
「なんだ?」
「あの、ちょっとお話したいことが!」

断られたらどうしようかなとドキドキしたけど、ヒートさんはちらっとバーン様を見た後、

「じゃあ外で話すか」

と、逆にわたしを引っ張って、練習場を出た。去り際にわたしもバーン様の方を見ると、こっちを睨んでいたような気がして、思わず逸らしてしまった。

「すみません、休憩なのに」
「いや。話って?」
「バーン様のことなんです、けど…」

わたし達は、練習場の外に出て話を始めた。ヒートさんは黙って頷いて、続きを促した。

「どうしてわたしをプロミネンスに入れたんでしょう…?やることは雑用ばかりだし…」
「そうだな…俺が思うに、バーン様は、ハニーが気に入ってる」
「は…はい?」

ヒートさんは真面目な顔で、腕を組んだ。うーん、と何を言うか考えているようだ。

「あ、この前、廊下で擦れ違った、よな?」
「あ、はい」

また、あの日の話だ。あの日一体何があったというのか。

「バーン様はハニーと擦れ違った後、アイツの名前は何だ、とレアンに聞いてた。多分、女の子だから。でもレアンも知らなかったから、その後バーン様は、自分で調べてたみたいだった」
「え、え?それは、どういう意味なんですか?」
「さあ。一目惚れってことじゃない」

ヒートさんがちょっと悪戯っぽく笑った。わたしは驚いて声が出なかった。ヒートさんの予想とは言え、あり得なすぎる。

「あ、そういえばバーン様は、甘い物はあまり好きじゃないよ」
「そ、そうなんですか?でも、いちごミルク…」
「ハニーはいちごミルクが好きか?」
「はい」
「だからだよ。きっとバーン様はハニーが好きなものがどんなものか知りたかったんだ」

そんなことが、本当にあり得るだろうか。確かに、バーン様にいちごミルクは似合わないけど。わたしが唸っていると、ヒートさんがわたしの背を叩いた。

「そろそろ練習再開だな。気になるなら、後から本人に聞いたらいい」
「あ、はい…」

そう言ってヒートさんは、練習場の扉を開けた。するとそこにはいきなり、バーン様が立っていた。
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テーマ「人外ファンタジー」
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