ようやく追いついたわたしは、バーン様の一歩、いや五歩くらい後ろを歩いていた。バーン様の真っ赤な髪によく似合う、赤と白のプロミネンスのユニフォーム。わたしも今日からあれを着るのかと思うと、今着ているイプシロンのユニフォームが少し愛しく思えた。最初見たときは、ジェミニほどではないけど、どうしてこんなにぴったりしたやつなんだろうって思ったのになぁ。

「オイ」
「は、はい!」

また飛んで行っていた意識が、バーン様の一言で帰ってきた。バーン様は振り返ることもなく、前を歩いている。

「お前、この間廊下で擦れ違ったの覚えてるか」
「は、はい!」

ついに、何かわからないけど、叱られる時が来た、と思ってわたしは身構えた。でもバーン様は、そうか、と言っただけで、話は終わってしまった。本当に、何なの?結局その後は会話もなく、プロミネンスの練習場まで到着してしまったのだった。



プロミネンスの練習場には、当然だけど、プロミネンスのみなさんがいる訳で。バーン様が集合をかけて、囲まれたわたしは、さっき以上に緊張していた。バーン様が、わたしの事を紹介してくれるみたいだ。

「今日からイプシロンからプロミネンスに移った、ハニーだ」
「よ、よろしくお願いします」

どうやらプロミネンスのみなさんは、特にわたしに興味がないみたいだった。悲しいような、ほっとしたような。それからバーン様は、みなさんに練習に戻るよう言った。わたしも今日は、イプシロンのユニフォームのまま参加しろと言われて、グラウンドに入ろうとしたけど、突然バーン様に腕を掴まれた。

「練習の前に、ちょっと俺喉渇いたんだよな」
「は、はい?」

バーン様はニンマリ笑った。

「とりあえず、いちごミルク買ってこいよ」
「い、いちごミルク…?」

意外と可愛い趣味だ。赤いから好きなのかな。いちごミルクはわたしも好きだ。

「イプシロンから来ていきなりスタメンに入れると思ってんのか?まずはベンチで雑用からだぜ」
「雑用、ですか…」

自分からプロミネンスに入った訳じゃないのに、と思ったけど、そんなことはとても言えない。練習場を出ようとするわたしに、二つ買って来い!とバーン様が言ったのが聞こえた。

急ぎ足で購買代わりのロボットから二ついちごミルクを買って、再び急ぎ足で練習場に戻った。バーン様はゆっくりが嫌いなようだったし。

「あの、バーン様、買って来ました」
「おう、ベンチに置いとけ」
「はい」
「あ、一個お前が飲めよ」

ネッパーさんとストレッチをしていたバーン様は、前屈したままわたしを指差した。わたしは驚いたけれど、ネッパーさんはもっと驚いているようだった。

「あああの、い、いいんですか…?」
「いいから言ってんだよ!わかったらさっさと練習に混ざれ!」
「はっ、はい!」

バーン様は怖いけど、悪い人ではないようです。
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