(!)幼稚園パロ


「きりちゃん、早く寝ようね」
「さぶろうせんせい」
「なんだい?」
「さぶろうせんせいはハニーせんせいがすきなんだろ!」
「ぶっ」

お昼寝の時間の大川幼稚園、年少さんのあおぞら組。一人だけなかなか寝付かないきり丸の隣に寝転がってあやしていた三郎先生は、きり丸の言葉に吹き出した。

「き、きりちゃん…何を言ってるのかな」
「おれしってるぜ、さぶろうせんせいのてちょうには、ハニーせんせいのしゃしんがはさんであるんだ」
「そっそそそんなもの、ないね!」
「あれ、かくしどり?」
「違う!あれは去年の卒園アルバムの…」

きり丸がニヤリと笑った。三郎先生は一つ咳払いをして、周りの園児達が起きていないか確認した。

「きり丸、よく聞くんだ。子どもが大人の話に首を突っ込むもんじゃない」
「おれ、せんせいのことおうえんしてやるよ!」
「しーっ!きり丸、声が大きい!あのな、確かに私はハニー先生が好きだけど、きり丸もハニー先生のこと好きだろ?それと一緒だよ」
「ちがうよ!へーちゃんが、さぶろうせんせいはハニーせんせいをやらしーめでみてるってゆってたぜ」
「兵太夫か…あのマセガキめ…」
「とにかくおれ、さぶろうせんせいのキューピッドになってやるから、せんせいがんばれよ!」

きり丸が笑顔でそう言ったとき、チャイムが鳴った。お昼寝の時間が終わったのだ。音で園児達が起き出す。三郎先生は一つため息をついた。

「きり丸、秘密だぞ」
「うん!」




翌日から、三郎先生はきり丸につきまとわれることになった。ついでに、それに気付いた兵太夫と三治郎にも。

「さぶろうせんせい!きょうはハニーせんせいにすきっていった?」
「三ちゃん、声が大きい!」
「だってさぶろうせんせい、へたれなんだもん」
「兵ちゃん…先生傷つくよ」
「あっさぶろうせんせい!ハニーせんせいきたよ!」
「えっ」
「うっそー」
「きーりーまーるー…」
「わー!さぶろうせんせいがおこったー!」

きゃっきゃっとはしゃぎながら、逃げていく三人。三郎先生は疲れたような顔で、近くにあったジャングルジムに腰かけた。

「三郎先生、仲良しですねぇ」
「え?わ、ハニー先生!」
「すみません、驚かせてしまいました?」
「いやいや、そんな…うわ」

自分の隣に腰を降ろしたハニー先生の向こうに、お節介三人組がいるのを見付けた三郎先生は、思わず露骨に顔に出してしまった。三人はニヤニヤしながら見ている。

「どうかしましたか?」
「いやっ何でもないです!」

慌てて三郎先生は笑顔に戻る。ハニー先生は、そうですか?と前を向いた。その隙に三郎先生が三人組に、あっちに行けとジェスチャーで示すが、三人組は口パクで何か囃し立てるばかりで、見ている気満々だ。どうやらきり丸は「はやくこくはくしろ」、三治郎は「いまがチャンス」、兵太夫は「がんばれへたれせんせい」、と言っているらしい。三郎先生は三人組に向かっていーっとしてから、深呼吸をした。

「ハニー先生、よかったら今度一緒におひゃっ…」
「…はい?」
「そ、その、お茶でも…」

噛んだ恥ずかしさでハニー先生から視線を外した三郎先生の目に、三人組がうつった。三人は呆れた顔をしていた。

「ふふ、そうですね」
「え?」
「ぜひ、ご一緒させて下さい」

ふんわり笑ったハニー先生に、三郎先生は少し情けない笑顔で、何度も頷いた。




「いやー、なんだかんだで先生、三人には勇気をもらったよ」
「せんせい、なんですきっていわないのー」
「大人には順序ってもんがあるんだよ、三ちゃん」

デレデレしている三郎先生。告白しなかったことに文句は言うものの、三人も嬉しそうだ。

「おとなってめんどくせー」
「じゅんじょのせいで、ハニーせんせいとられちゃってもしらないよ!」

兵太夫が笑顔で言った言葉に、三郎先生も一瞬笑顔が固まる。が、すぐに笑って、三人の頭を撫でた。

「せっかくお前達がここまで協力してくれたから、先生がんばるな!」
「ところで、さぶろうせんせい」
「どうした?きり丸」
「せんせいのてつだいしたから、おだちんくださーい!」
「…あのなぁきり丸」

三郎先生は苦笑いした。


恋のキューピッド




「えー!さぶろうせんせいのけちー!」
「仕方ないな、じゃあ飴でいいか?」
「えー、あめだけー?」
「オレンジとぶどう、どっちがいい?」
「…ぶどう」

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