こんにちは、三年は組の浦風藤内です。自分で言うのもなんですが、予習や自主トレを進んでする真面目な性格です。ですがクラスは、方向オンチの左門や三之助より下の、は組、です。




「はあ、これって才能ないってことかな」

いつものように、自主トレで破壊してしまった校舎を見ながら、僕はつぶやいた。薄々感じてはいたのだ。自分が周りの人よりも、劣っているということは。もちろん、その分努力はしてきたつもりだった。でも結果は、こうだ。壊した壁を見ながら、また用具委員の作兵衛に怒られるかな、とぼんやり思った。

「藤内、おつかれ!」

突然肩に手を置かれて、体がびくっとした。しかしその声は聞き慣れたもので、振り返ったら思った通り、ハニーがいた。ハニーはくのいち教室の三年生で、僕とは委員会が同じなので、よくしゃべる方だ。ハニーはにこにこ笑っていて、手にはおにぎりを二つ、持っていた。

「また自主トレ?」
「ああ、でもまた壁を壊しちゃったよ」

悲惨な状態の壁を指せば、ハニーは苦笑いした。ああ、僕はなんて格好悪いんだろう。僕も顔では苦笑いをしながら、本当はすごく恥ずかしく、悔しかった。ハニーは、僕の好きな子だった。好きな子の前で格好よくいたいと思うのが、男という生き物だと思う。でもそう考えていることがばれるのはもっと格好悪いことな気がして、僕は必死に笑顔を作った。ハニーはそんな僕の葛藤も知らずに、ぺたんと地面を腰を降ろすと、持っていたおにぎりの片方を一口食べた。それを飲み込んだあと、立ったままだった僕を見上げて、笑った。

「わたしは頑張って自主トレしてる藤内が、好きだけどなぁ」

一瞬、何を言われたかわからなかった。恥ずかしそうに笑って、かじっていない方のおにぎりを僕に押し付けて走り去るハニーの背中を見たとき、ようやく僕の頭が回転を始めた。同時に、顔に熱が集まるのを感じた。作兵衛には申し訳ないけど、僕はこれからも自主トレを頑張ろうと思った。あんなことを言われたら、嫌でも頑張ってしまうのが、男という生き物だと思う。




恋がひとつ、始まったようです





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