バルツァへの道中、わたしは栄口くんに召喚師のことを聞いていた。

「驚いた…ウンディーネと長く正式契約してるのに、なまえちゃんは召喚師としては新米なんだ」
「そうなの。いろいろ教えて、栄口くん」

案内の千代ちゃんとみんなが前を歩いているのを眺めつつ、一歩後ろを歩くわたし達。

「いろいろ、かぁ」
「あ、どうして正式契約をしている人は少ないの?」
「そりゃあ、まず精霊のいる場所が特定できないからね。バルツァは人里離れていて、シルフに所縁のある場所だったからわかったけど…さっき仮契約をした地の精霊も、他の精霊達も、居場所は知らないんだ。もしかしたら誰かと契約しているかもね」
「なるほど…」
「それに、やっぱり危険なんだ。精霊は普段人の訪れにくい場所に棲み着いてるからね。そもそも、仮契約でも召喚師はかなり強いし。それに契約には、精霊との相性もある」
「相性?」
「精霊にも性格があるでしょ?相性が合わないと、追い返されたりもするらしいよ」
「えーっ!」

わたしの反応に、ウンディーネはクスクス笑った。

「僕は初めの頃、なまえとは相性が合わないって思ってたからね」
「え、?!聞いてない!」
「言ってないもの。僕の場合はホワイトウルフ達から解放される為に契約せざるを得なかったから、相性は取り敢えず二の次だったんだよね」

ウンディーネはちょいちょい爆弾発言を入れてくる。

「今は大好きだから問題ないでしょ?」
「う、うん…」
「それ、すごいなって思ったんだ。ウンディーネは下位精霊の中でも飛び抜けて気紛れって言うからさ」

確かに、ウンディーネは気紛れだ。

「他には他には?ウンディーネってどんな性格って言われてるの?」
「水の精霊ウンディーネはとても賢い精霊で、力押しの戦闘よりも、戦略を立てて勝つことが好き。気紛れで冗談好き、契約相手の召喚師にも飄々としていて、代々ウンディーネと契約をした召喚師には賢人が多い」
「すごーい!そんなことまで知ってるの!」
「合ってた?いろんな文献で見たことを掻い摘んでまとめてみたんだけど」
「合ってる合ってる!あ、代々ってのは知らないけど」
「ホントに〜?僕、確かに頭はいいけど、なまえに尽くしてるよ〜」
「ふふ、まあね!でも、合ってると思うなー。ね、他には?シルフは?」
「シルフは人見知りで戦闘好きの精霊って聞いてるよ。気に入った人にとことん力を貸す…守る強さって感じかな。対象的に、破壊する強さを持つのが、炎の精霊って言われてるんだ。でもその分、契約する召喚師の性格を問わない。魔力を供給してくれるなら、どんな人でもって感じらしいよ」

やっぱり、召喚は魔法とは全く違う。精霊との契約であり、一方的に使うんじゃなくて、二人一組の共闘なんだ。嫌われたら力は出せないし、好かれていれば絶大な力を発揮できる。難しい職なんだな。

「さっきの、ノームは?」
「土の精霊ノームは、ウンディーネと対象的と言われることが多いかな。ノームは知識が豊富で頑固…って感じかな?」

栄口くんがちらっとウンディーネを見ると、彼は喋りたくて仕方なかったと言うように話し出した。

「僕はあいつ、好きじゃないんだよね!偉そうだし、あいつと比較されると、僕はずる賢いって言われることが多いんだ。あいつがたくさん持ってるのは、雑学!僕のが柔軟な思考を持ってるね」
「…精霊同士でも好き嫌いがあったり、人間臭いものなんだね」

思わず、笑ってしまった。

「シルフとは、仲良しだよ!ね、シルフ」
「ええ、ウンディーネ」
「そうなんだ」
「僕らはヒトの姿で生まれた同士なのさ」
「ノームもね」
「そうだった…あいつはいつも花の姿をとるから、忘れてた」
「炎と、雷の精霊は、どんな姿で生まれたの?」
「それ、俺も知らない」
「炎は獣、雷は鳥さ」

鳥はわかるとして、獣とは。いろんな獣の姿が思い浮かぶ。見てみたいなぁ、他の精霊達も。ノームもウンディーネを目の敵にしてるのだろうか。炎や雷の精霊の名前や、姿はどんななんだろうか。実際の性格はどうなんだろうか。何時の間にか、わたしは召喚師が好きになっていた。ウンディーネを見ると、彼もわたしを見て笑っていた。

「そう思ってくれて嬉しいよ」
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