たじは飛び退いて剣を振りかぶり、泉くんが慌てて扉を閉める。蝙蝠はすぐに退治できたが、心臓がバクバクしている。

「どうすっかな…」
「ね…」
「あ、さ、さっき…」
「ん?」

廉くんが真っ直ぐ扉だけを見つめて呟いた言葉を、泉くんが拾って、みんなが注目する。

「その…人が…」
「人?!」
「みっ、見間違いかも!だけど、梯子に蝙蝠がたかってるところがあって、そこに人が、いた…かもしれない…?」

どんどん自信なさげに小さくなっていく声。わたしはそんなところを見る余裕はなかったので、なにも言えずにいたら、たじが再び扉に手をかけた。

「そんなの助けなきゃだろ!ゲンミツに!開けんぞ、いいか?」

みんなその言葉を待っていたように頷き、再びたじが扉を開けた。すぐに飛び込む蝙蝠も、備えていればなんとか対応できる。それらはたじが倒し、邪魔な周囲の蝙蝠をあらかた泉くんが仕留めた。

「ホントだ!あの蝙蝠がたかってるとこだな?!」
「そ、そう!」
「って見えてもどうにもならないだろ田島!」
「なまえ!仮契約だ。土の精霊に力を借りて、助けるんだ!」
「ど…どうやって?!」
「とりあえず俺、ちょっと降りて弓で援護する!田島と浜田、なまえと俺を守れよ!」

泉くんが梯子を少し降りて足を絡ませ、弓を構える。たじも身を乗り出してそれを助け、こぼれた分を浜ちゃんが。

「なまえ、前にシルフに力を借りたと言ったね。その時のように強い気持ちが必要だ。そして名前を呼ぶ、大きな声で!」

集中した。あそこにいる人を助けたい…複数?一人?どうしてここに?あの時ほど集中できない。みんなは頑張っているのに!

「やばい!一人、落ちた!」

泉くんが叫んだ。咄嗟に扉を覗き込み、その姿を確認してわたしは、何故か、

「…なまえっ?!」

梯子にも手を掛けず、体を投げ出した。その人に手を伸ばす。遥か遠く感じていた床がぐんぐん近くなる。そしてわたしは叫んだ。

「ノーム!!」

神殿に声が響いた。









「すごい子だ。君がウンディーネが認めた子だね」
「ん、う…」

衝撃に備え目を閉じてしまったわたしは、そんな声と共に、背中から柔らかい場所に落ちた。目を開けると、おびただしいほどの蔓が床を多い、わたしを包んでいた。

「…っ、さっきの人は!」
「大丈夫、助かっている。大した魔力だ。上質で真っ直ぐで…これから君はたくさんの高い壁にぶつかるだろう。だが、決して諦めるな。君は乗り越えられる」

わたしは、目の前の花が喋っていることに気が付いた。

「ノーム?」
「ああ」
「ありがとう」

顔もない花が笑ったように見えて、そしてゆっくり蔓は土に戻っていった。
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