朝から夕方まで戦っていると、疲労はもちろんだけれど、かなり戦闘に慣れてくる。この敵はここを狙うと効く、だとか、この武器にはこういう戦い方もある、だとか。わたしや廉くんも護身用に、どんな職の人も扱える、小さなナイフを持つことになり、それを扱う特訓をした。攻撃力こそ低いものの、それを持っていることで安心感があるので、お守りみたいなものだ。丸一日戦うと、体には相当な疲労が溜まる。宿に着く頃には、足を動かすのも億劫だ。それが一晩で綺麗に消えるのは、廉くんの薬のお陰だろう。廉くんはいつの間にか、たくさんの薬を作れるようになっていた。正確な名前がわからないらしく、疲れがとれるやつ、あの鬼の爪の毒を消すやつ、眠くなるやつ、と自分流に見分けているようだった。相変わらず、わたし達には差がわからないので、回復は廉くん頼りだ。ただ、傷薬だけは使用頻度が高いので、わたし達も邪魔にならない程度の少量を各自持ち歩くことになり、覚えた。

数日間、わたし達はそんなことを繰り返した。隆ちゃん達は夕方になるとやって来て、わたし達と入れ替わりに山を下りていく。会った時に怪我をしていると、文貴くんが治してくれる。隆ちゃんは、毎日小鬼と戦ってよく飽きないなぁと呆れた目でわたし達を見るけど、あれでもあいつ感心してるんだ、と花井くんが教えてくれた。

「今日も疲れたー」
「何日目だっけ」
「五日目」

五日かあ。依頼ではなく、ひたすら特訓だけだったので、港街で鍛えていた時よりも、長く感じた。

「そろそろ、もう一回、レベルを計ろーぜ」
「そうだね、じゃあ明日の朝…」
「今から!」
「もうー…」

元気の塊のたじが、駄々をこねる子供のように言うので、わたしは仕方なく了解した。廉くんが、ちょっとでも元気が出るようにと、小さな丸薬をくれた。甘くて飴みたいな、わたしの好きなやつだ。特に体にいい薬草が混ざっているわけでもないらしいから、飴みたいなというより、飴かな。のたのた歩いて、レベルを計ってくれる出店までたどり着く。たじから計って、わたしが最後。相変わらずみんな一律、15レベルになっていた。あれだけ頑張って二つかあ、と思ったりもしたけれど、数字以上に得たものはあるはずだ。とか言って、わたしの特訓はナイフの扱いと、ウンディーネと息を合わせることくらいだったけど。浜ちゃんはまだ魔法剣の扱いに慣れる練習をしていて、ウンディーネとの連携までやっている余裕はなかった。ウンディーネは、ぶっつけ本番でもなんとかなるよ、と言ってたけど、大丈夫かな。




翌日の朝。最近いつもお世話になっている、量が多くて値段は安い、学生食堂のような出店で朝食をとっていると、隆ちゃん達がやって来た。

「おはよーなまえちゃん達ー」
「おはよう文貴くん達ー」
「お前ら、朝からすげー食うな」
「おう!食べとかないと午前中もたねーもん!」
「今日も特訓か?」
「の、つもりだよ」
「そろそろ、下りないか?お前らが戦ってるの見てたけど、レベルより全然強いと思うよ」
「マジで!」

たじが興奮して、ぴょんと椅子に飛び乗った。文貴くんもにっこりして頷いてるし、隆ちゃんも皮肉を言わない。ほ、ほんとかな、すごく嬉しい。

「ギルドの試験も、いいセン行くんじゃねーかな」
「まあ落ちても、他にギルドはたくさんあるしな?」
「うるせー阿部!」
「まあまあタジマ、落ち着いて。で、下りる?」

キーキーと怒るたじを押さえながら、文貴くんが視線をこっちにやった。たじを除くわたし達四人は目を合わせて、頷く。

「じゃあ決まりだな」
「今日は急だから、出発は明日にしよう」
「わかった!」
「今日中に準備だね」

手を振って離れていく三人を見送ると、わたし達は今後の予定を相談し始める。

「今日の特訓は午前で切り上げて、午後は買い物にするか」
「そうだな。で、明日はギルドで試験、か」
「実はさ、俺目付けてた防具あんだけど!安くて、結構性能もいいの」
「お、俺も、薬草、買っときたい、な」
「俺も、矢見とこうかな」
「とりあえず、特訓行こうよ。買い物の話は午後!」
「そうだな!行くか!」

ギルドやら防具やら、あと召喚や魔法なんていう単語を、恥ずかしがらずに言えるようになった。なんて言うか、わたし達、染まってきてるなぁ。

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