隆ちゃん達の宿は広くて綺麗なのに、宿泊費は安く、人気の宿らしい。そこの部屋はすでに埋まっていたので、わたしと泉くんは、少し離れたところにある古い宿をとった。なんだか出そうな雰囲気があるけど、人数分の部屋が空いているのがそこくらいだったのだから仕方ない。それに、安いし。でも、できたら明日は別の宿に泊まりたい。


宿をとってからは、浜ちゃん達を探しがてら、出店が集まっているところを、泉くんと二人でぶらぶらした。旅の途中の人が、色々なものを持ち寄って売っているようで、商品には統一性がなく、見ていて楽しい。お祭りの出店のような店構えも、気分がわくわくする。旅の商人達はみんな陽気で、商品について質問すると、嬉しそうに説明してくれた。

「はー、楽しいね!」
「そうだな。それに全体的に安いみたいだし、防具とか買い替えるにはいいかも」
「食べ物も安いしね!」

一通り店を見て、少し離れたところでゆっくりしていると、浜ちゃんとたじと廉くんがやって来た。

「宿とれたか?」
「とれたよ!」
「サンキュ!」
「たじ達は何か買い物した?」
「んー、俺と三橋はとりあえず食う物だけ!なまえと泉の分も買ってきたぞ!」
「わあ、ありがとう!」
「浜田は何か石みたいなの見て真剣に悩んでたよな」
「ああ、これな」

たじの言葉に、浜ちゃんが赤い宝石のような物を取り出した。うずらの卵くらいの大きさで、透き通ってキラキラしている。

「お守りみたいなもん?」
「違う違う、こう使うんだ」

そう言うと浜ちゃんは、剣を取り出して、元々刃にはまっていた宝石を取って、そこに赤い宝石をはめ込んだ。サイズピッタリのその宝石は、カチリと音を立てて剣に収まった。その一瞬だけ、浜ちゃんの剣の刃は薄く炎を帯びたように赤くなった。宝石は、中で炎が揺れているみたいに、ゆらゆらと光っていた。

「すげー!」
「魔法剣ってこうやって使うらしい。図書館で見てから、探してたんだけど、港街にも図書館の街にもなくてさ」
「いいなー浜田!かっけー」
「は、浜ちゃん、かっこいい…!」
「そ、そうか?」

たじと廉くんからの賞賛の眼差しに、浜ちゃんは照れたように頭をかいた。

「攻撃の時に、こうやって、意識を集中するとさ」

浜ちゃんが剣をギュッと握り、集中した。すると、宝石がキラリと光って、ぶわっと刀身が炎に包まれた。びっくりして、少し飛び退くわたし達。

「これが魔剣士なんだって」
「浜田ズリー!なんで俺魔剣士じゃなかったんだろー」
「便利だなー」
「あと、この宝石を入れ変えれば、効果が変わったりすんだって」

浜ちゃんが、もう一つ宝石を取り出した。今度は青の宝石。

「アルフで売ってたのは、この二つと、あと白いのがあったんだけど、高くて買えなかった」
「青いのは、なんの魔法?」
「店の人は氷だと思うって言ってた」
「思うって、店の人は魔剣士じゃねーの?」
「うん。普通の剣士だって」
「じゃあ今、ニセモノじゃないか、確認してみろよ!」
「田島、お前魔法見たいだけだろ」

泉くんに笑われて、うるせーとたじが拗ねたような顔をした。どうやら、図星だったらしい。

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