目が覚めたら、ベッドの中だった。ふかふかであったかい。ウンディーネが助けてくれたんだろうか。ゆっくり体を起こして、周りを見ると、みんなが扉のあるところに集まっていた。わたしは立ち上がって、声をかける。

「みんな!」
「なまえ!」

くるりとたじがこっちを向いて、扉の向こうの部屋が見えた。わたしは、目を丸くした。どうやらリビングらしいその部屋にいたのは、

「よかった、目が覚めたんだね」
「ふ、」
「なまえー!無事でよかったな!」
「ひゃっ」

突然たじが、わたしに飛び付いてきた。勢いでそのままベッドに倒れ込む。

「ちょっと、たじ!」
「黙って聞けよ、なまえ」

ぼそぼそっと小さな声が耳元で聞こえた。扉のところに立っていた人、文貴くんがきょとんとしてこっちを見ている。

「向こうはこっちのこと、知らないみたいなんだ」
「え?」
「だから知らない人だと思って話せよ」

それだけ言って、たじはわたしから離れた。文貴くんはにこにこして、仲良いんだね、と言った。

「初めまして、オレはミズタニフミキ。洞窟の前で倒れてた君達を見つけて、助けたんだよ」
「あ、ありがとう、初めまして…なまえ、です」
「話は聞いたよ。なまえちゃんは召喚師なんだよね」
「あ、うん」
「オレは魔法使い。って言っても、白魔法使いって言って、主に回復専門なんだけどね。戦いは仲間の二人に任せてるんだ。今は買い出しに行ってるんだけど」

仲間の二人、と聞いて、どきりとした。と、タイミングよく、扉の開く音がする。

「あ、ちょうど帰って来たみたい!」

文貴くんがにっこりして、リビングの方へ入っていった。浜ちゃんと泉くんと廉くんもそれに続いたので、わたしとたじも立ち上がり、リビングに入る。

「おかえり〜」
「おう」
「お?全員起きたんだな」

大きな荷物を抱えて立っていたのは、やっぱり、隆ちゃんと花井くんだった。廉くんが隆ちゃんを見て、びくん、とした。たじは花井くんの名前を呼びかけて、泉くんに足を踏まれた。浜ちゃんが口をぱくぱくした。でもわたしは、そのどれも目に入っていなかった。久しぶりに見た隆ちゃんに、じーんとなっていたのだ。

「今言ってたオレの仲間、紹介するね!こっちの背が高いのがハナイ、あっちの目付き悪いのがアベ!」
「誰が目付き悪いだって?」

隆ちゃんが、キッと文貴くんを睨んだ。文貴くんはへらっと笑って受け流し、睨まれていない廉くんがビクビクと反応した。花井くんが隆ちゃんを宥めて、一歩前に出る。

「水谷が言ったけど、オレはハナイアズサ。ハナイの方で呼んでくれ」
「じゃあ花井、水谷が助けてくれたって言ったけど、ここってどこ?」

たじが花井くんの顔を見た。大きくてぐりぐりしたたじの目は、見つめられると、その目力にちょっとたじろいでしまう。

「ここは山間の町、アルフの宿屋だ」
「山間の町、アルフ…」
「そうだ、これ、渡しとく」

そう言って花井くんは、たじに封筒を手渡した。たじが封筒を開けて、わたし達も覗き込むと、そこにはお金が。

「え、なんで金くれんの?」
「洞窟のホワイトウルフ退治の報酬だよ。オレ達はたまたま依頼で洞窟の様子を見に行ったんだけど、その時入り口に倒れてたお前らを見つけたんだ。ただ、助けた分、オレらも三分の一貰ったからな」
「い、いいのか?」

確認するように聞いたのは、浜ちゃん。たじはお札の枚数を数えている。わたし達が今までやっていた依頼とは、比べ物にならないくらい高額だ。

「いいんだ。それが正当な取り分だろ」
「サンキュー花井!」
「ったくお前本当にお人好しだな、貰っときゃいいのによ」
「うるせーよ、アベは性格悪すぎな」
「はいはい、二人ともその辺にしといてね」

ピリピリし始めた二人の間に、文貴くんが割って入った。文貴くんのふにゃんとした笑顔に、二人は気が抜けたのか、はぁとため息をついた。雰囲気が和む。なんだか、普段の7組の様子が目に浮かぶ。苦笑いして横の泉くんをちらっと見ると、泉くんも苦笑いしていた。

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