図書館の街ことリチェルカに行った次の日から、わたし達は積極的に、街の外に出る依頼をこなした。もちろん、経験値を稼いで、レベルを上げるため。その分、余分なことにお金を使う時間がなかったので、お金もいい感じに貯まってきた。浜ちゃんと泉くんの武器も買い換えると、バトルはずいぶん楽になった。
「やべーオレら結構いけてるよな?!」
「そろそろ、もう一回レベル計ってみようよ!」
そんなわけで、わたし達は久しぶりにリチェルカに向かった。セレーノからリチェルカまでにいる獣は、もうたじと浜ちゃんなら一撃で倒せるようになってきた。泉くんの矢は、ダメージこそ剣には敵わないけど、命中率は一番だ。廉くんも、いろいろ薬を作ってみてるみたいだ。みんな怪我が減ったから、まだあまり使う機会がないけど。
どうでもいい話などしながら、余裕でリチェルカに到着すると、久々に図書館に入る。依頼で何度か街には来ていたけど、図書館に入ったのはあの日以来だ。この前とは違う司書のお姉さんに声をかけて、レベル測定の部屋に入る。再びたじが一番に名乗り出た。
「お!10レベル!」
「上がったじゃん!」
「田島くん、すごい…!」
ドヤ顔のたじ。次は泉くんだ。
「…あ、11レベル」
「げ!泉のがつえー!」
泉くんがたじを見て、ニヤッと笑う。たじは悔しそうだ。泉くんの次は、浜ちゃん。
「オレはー…10だな」
「浜田も10レベルか」
また泉くんがニヤリ。浜ちゃんが泉くんのほっぺをつねっている間に、廉くんがレベルを計る。
「あ…オレも、10、だ!」
「おおっ!おめでとう!」
「じゃー最後はなまえだな」
たじに言われて、廉くんと場所を交代する。少しドキドキしながら例の機械をかぶり、結果を待つ。
「…えー!わたしだけ、9レベル!?」
みんなより一つ下で、わたしはショックを受けた。そりゃ、わたしはまだ、ろく戦えない召喚師だけど。でも、木の棒で戦いには参加してるのに。経験は積んでいる、はず。
「大丈夫だって、なまえがレベル上がるまでは、ちゃんとオレらが守るって!」
「たじ…」
たじの頼り甲斐のある笑顔。不覚にも少しキュンとした。まだまだ幼稚園児くらいの経験値だけど、わたし達には一応元の世界での経験値もあるのだ。
「そういえばこの前、泉くん達は地図見たんだよね」
図書館を出てすぐの広場に座って、わたし達は話している。広場には屋台がいくつか出ていて、わたし達はお昼ご飯にホットドックを買った。
「おー。田島はまともに見てねーけど」
「見てもわかんねぇもん!」
「…この辺って、他に街はあるの?」
「んー…確かなかったな、多分。なんか、街の北に山脈があるんだ。そこを越えればいくつか街があった」
「そっかー…じゃあ次は、そこに向かう?」
泉くんが思い出しながら地面に描いた、大体の地図を見ながら、わたしが聞いた。
「え、あ、ど…」
「へ?」
「洞窟、は…?」
「洞窟って?」
「精霊、の、いるって言う…」
「あーそうだな、そっち先のが近いのかも」
「じゃあまず洞窟探検だな!」
廉くんの言葉に、みんなが同意して、話はどんどん進んで行ってしまう。
「ち、ちょっと待って、みんな洞窟は罠かもって…」
「んー、まあ、レベル上がったし、腕試しにもなるだろうし」
「それになまえ、召喚したいだろ?」
たじが言って、ホットドックの最後の一口を食べた。わたしは驚いたけど、その言葉には強く頷く。
「なら行こーぜ、この辺の敵はもう弱えーしさ」
泉くんはニッと笑った。それを見て、わたしも今度は笑顔で頷いた。