「おっせー!なまえが最後だぜ」
「ごめん!ちょっと夢中になってたんだ」

一階に戻ると、すでにみんなが待っていた。

「なまえは何の本見てたんだ?」
「召喚師、について…みたいな」
「へえ、なんかわかった?」
「それなんだけど!」

わたしはさっき、お兄さんに言われたことを、みんなに話した。もちろんすぐに行こう、という話になるかと思ったのに、廉くん以外の三人は疑うような表情になってしまった。

「そんな普通に教えてくれるもんか?」
「だから、魔王討伐に繋げるために…」
「…罠かもよ?」

泉くんの脅すような口調に、思わず言葉に詰まる。確かに罠の可能性もなくはないけど、あんなに笑顔の優しい人を疑うのは、なんだか申し訳ない気がする。わたしが悩んで黙っていたら浜ちゃんが、気を遣ってくれたのか、ぱん!と手を叩いて笑った。

「まあまあ、悩むのは後にして!それよりさ、俺いいこと聞いたんだ」
「浜田も怪しいオニーサン情報かよー?」
「ちげーって!司書のお姉さん情報!図書館ってさ、無料で今のレベルを計ってくれんだって」
「レベル?」

いよいよ、本当にゲームっぽい単語が出てきた。やっぱり、経験値を貯めたら上がる、ってやつなのだろうか。

「自分のレベルって、多分知ってた方がいいじゃん?無料なら計ってみようぜ」
「い、いいなそれ!レベルって!」

たじは目をキラキラさせている。レベルを計るのにはわたしも賛成だ。少しでも、こっちで自分達がどのくらい生き残れるのか知って、安心したい。レベルはそれを数字で表してくれるだろう。浜ちゃんは全員が納得した顔をしたのを見ると、司書のお姉さんに声をかけた。お姉さんはすぐに笑顔で、別室に案内してくれる。

「こちらになります」

案内された部屋にあったのは、椅子とモニター、それに変な機械の帽子。頭にかぶってレベルを測るものらしい。

「レベルの計測は初めてですか?」
「はいっ」
「では、簡単に説明させてもらいますね。レベルとは、経験値を表すものです。必ずしもレベルが強さの全てではありませんが、大抵の場合、レベルと強さは強く結び付いています。特に冒険者さんですと、戦う機会も多いと思いますが、戦いにおいては経験が最もモノを言うとも言われています。自分のレベルを知ることは、自信にも繋がりますし、定期的に計測すると成長もわかりますからお勧めです」

なるほど。経験値、つまり経験そのものの量が、レベルに繋がるってことのようだ。確かに、目に見える成長は嬉しいし、努力の糧になる。

「それではどなたから…」
「俺から!」

真っ先に名乗り出たのは当然のようにたじ。あんな機械をかぶるのは少し怖い、などとは思わないらしい。お姉さんはたじに機械の帽子をかぶせると、なにやらモニターに繋がったタッチパネルのようなものをいじり、また帽子を外した。

「え?終わり?」
「はい、終わりです」

お姉さんが微笑みながら言った時、モニターになにやらデータのようなものが映し出された。一番太く書いてある数字は、5。

「5レベル…ですね」

お姉さんがちょっとだけ眉の間に皺を寄せたのを、わたしは見てしまった。しげしげとタッチパネルを見ている。おかしい結果なんだろうか。

「あ、あの、わたし達まだ冒険初心者なんですけど、普通ってどのくらいのレベルなんでしょう…?」

その表情に不安になって、思わず聞いてしまった。聞いてから、少し怖くなった。

「…経験値とは人生の中のあらゆる経験の値ですので…レベル5は一般的には幼児くらいのレベルです」
「よっ、幼児?!」
「はい、幼少期は体験がほぼ全て初めての経験になりますから、一般的には、十代になるまでに、少なくとも25レベルほどにはなる…はずです」
「さんじゅう…」
「ち、ちょっと他の方も測ってみましょう」

二十ものレベル差は、いったいどれくらいの経験で埋まるのだろうか。自信をつけたかったはずが、思わぬ衝撃の事実に、逆に生きていけるかが益々不安になった。
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -