俺には好きな奴がいる。大海原中サッカー部のマネージャー、なまえだ。最初はなんか気になるってくらいで、練習中にちらちら見たりしてて、でもたまに目が合ったらニコッて笑われて、すげードキッとしたりするんだよなぁって音村に話したら、それは綱海がなまえを好きってことじゃないか?って言われて、初めて自覚した。そうと分かったら今まで以上に気になるもんで、俺がちらちらなまえを見る回数は増えた。でも目が合う回数は増えなかった。

でも、今日は違う。今日は妙によく目が合う。それはつまりなまえも俺のこと見てるってことだ。俺のこと見てるってことはつまり、なぁ?そういうことだよなぁ?そんなわけで今日の部活の時間、俺は終始ニヤけていた。何回か音村やキャンに、今日の綱海は気持ち悪い、って言われたのも気にならなかった。

気分がいいまま、部活は休憩に入った。なまえは用意していたドリンクを部員達に配っていく。なまえが俺のところに配りに来たのは一番最後で、ドリンクを渡されるのと同時に腕を掴まれ、綱海くん、ちょっといい?と声をかけられた。俺は内心ガッツポーズしつつ、なんでもない感じに振る舞って、頷いた。なまえはベンチまで俺を連れて来ると、そこに座った。隣に座る俺。

「あのね、綱海くん」
「なんだ?」
「ずっと言いたかったんだけどね、」

少し言いにくそうに言葉を濁すなまえ。そんな様子も可愛い。

「ええと、その…」
「お、おう」
「綱海くんね、シャツが裏表、逆だよ」
「…へ?」
「ジャージの下のTシャツが、裏表逆だったの、ストレッチの時に気が付いて、今日ずっと言いたかったんだけど、なんか言うタイミングがなくて…」

照れたような笑顔のなまえ。でも俺の頭に、それを可愛いと考えている余裕はなかった。自分の体を見たら、確かにシャツは裏表逆だった。

「でも他のみんなはまだ気が付いてないみたいだから、こっそり言った方がいいかなって思って。休憩の間に直してきなよ!」

にっこりしたなまえに、俺はお礼を言うことしかできなかった。



 



「あんなに期待させておいて…でもそんな小悪魔ななまえもいいと思わねぇか?音村」
「綱海はポジティブだね、もう自分から言えばいいのに」
「ばっバカ、んなの恥ずかしいだろ!」
「ああ、そう」




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なんか綱海が恋する乙女
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