決勝戦が終わり、祝勝会が終わり、ぼちぼち日本へ帰国ということになった。懐かしい一之瀬くんや土門くん、仲良くなったディランやマークやフィディオやロココに別れを告げて、今日で本当に最後の一日となった。自由行動ということで、綱海さんと二人でゆっくりライオコット島を散策した。久しぶりに、試合の緊張感から完全に解放されて、のんびり話ができた。

夕方になり、わたし達はイタリアエリアの運河を眺めていた。ライオコット島はこの先もテーマパーク的な存在として残るようだけど、とりあえず今回のFFIというビッグイベントが終わり、人は減っていた。今も、帰りの飛行機に向かうらしい人が何人もゴンドラで運河を渡っている。その中に、イタリア代表のユニフォームを着て、両親と楽しそうに話している男の子を見つけ、綱海さんは目を細めた。

「子供か…いいな」
「…へ?!」
「俺、子供が生まれたら絶対一緒にサーフィンしたかったんだけど、サッカーもいいよなぁ」

綱海さんから子供の話が出ると思わなくて、特に最初の呟きにはちょっとびっくりしてしまった。

「綱海さんは、子煩悩なお父さんになりそうですね」
「ああ、子供は好きだな」

その辺でなんとなくお互いに恥ずかしくなってきて、話をやめて運河を見た。別に綱海さんも、深い意味があって話し始めたんじゃないのはわかるけど、中学生というのはそういうことに無駄に敏感だったりするのだ。

「なあ」
「はい?」
「好きだ」
「…」
「何で黙るんだよ!」
「…わ、わたしも好きです」
「…」
「ちょっと、綱海さん!」

自分は黙るなって言ったくせに。そう言おうと横を向いたわたしの唇が、綱海さんのそれに塞がれてしまう。突然のことにあわあわしていたら、すぐに顔が離れて、綱海さんがくしゃりと笑った。

「可愛いな、お前!」
「な、」
「お前を好きでよかった。それに、お前も俺を好きでいてくれるなんて、俺は幸せ者だな!」
「綱海さん…」

わたしもこの人を好きでよかったと、この時心から思ったのだった。


なぞる


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -