河川敷までランニングに行っていたイナズマジャパンのみんなが帰ってきて、わたしは順番にタオルとドリンクを渡していった。一番最後の壁山くんまで配りきって、綱海さんがいないことに気が付く。

「壁山くん、綱海さんは?」
「アレ?俺よりずっと前を走ってると思ってたッスけど…俺は自分が走るのに精一杯で…」

壁山くんはバテバテだったので、今度はトップ集団に聞いてみる。

「風丸くん吹雪くん、綱海さん知らない?」
「綱海?そういえばいないな」
「いつもなら僕らの後ろくらいにいるんだけど、今日は声が聞こえてなかったね。一年生と一緒に走ってあげてたのかな?」

吹雪くんが言っていたので、今度は一年生であまりランニングが好きじゃない二人に聞きに行く。

「立向居くん木暮くん、綱海さん見てない?」
「綱海さんですか?そういえば途中から姿が見えなかったですね」
「最初は前を走ってたけど。てゆーか、なんで俺達に聞くの?」
「こ、木暮くん!…あ、不動さんなら見ていたかもしれないですよ、いつもゆっくり走ってるから…」
「サボりだよね、ウシシ!」

立向居くんの助言で、今度は不動くんに聞いてみる。

「不動くん、綱海さんどこ行ったかわかる?」
「あ?綱海?あー、そういや途中でフラッと公園に入ってったな。サボりじゃねーの」

不動くんにお礼を言って、わたしは公園に向かった。綱海さんは練習をサボるような人ではない。何か理由があるはず。



学校からそこそこ近い公園に入ると、茂みに向かって座り込んでいる綱海さんが見えた。ま、まさか、綱海さん、我慢しきれず用を足しているのじゃ…と嫌な予感が頭を駆け巡ったが、どうやらそうではないらしい。ちょっと近付いてみたら、綱海さんは猫に向かって笑いかけている。大体男の人は座らずに用を足すか…ってどうでもいいけど。

「つ、つなみさ…」
「にゃーん!」

ん?今、綱海さんの声に似た猫の声が?

「にゃーお」
「にゃー!にゃー!」
「にゃーん」
「にゃおーん!」

いや、紛れも無く綱海さんの声だった。猫と会話している、つもりらしい。ちょっと待って、可愛いを通り越して、馬鹿としか…いや可愛いけど。

「綱海さん!」
「うわ!お前いつからいたんだ?ビックリさせんなよ!」
「ビックリさせんなよじゃありません、ランニング中でしょう!急にいなくなられてこっちがビックリです」
「はは、悪ぃ!公園からこいつが呼んでたからよー」
「綱海さん、会話できるんですか?」
「おう!なんとなくな!」
「その猫は、なんて?」
「世界大会応援してるニャー!ってよ!いいやつだよな!」
「そ…そうですね」
「っと、そろそろ戻らねーと、監督に怒られちまうな!行こうぜ!」

ちょっとはこっちの身にもなって下さい、と思いつつも、手を握られ引っ張られると、ついドキドキしてしまうのだ。

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