私は綱海がサーフィンする姿が大好きだった。だから突然綱海がサッカー部に入った時は、かなり衝撃だった。理由を聞いたら、砂浜で雷門中とやったサッカーが忘れられない、とか言って。中学サッカーに全く詳しくない私は、雷門中がどんな中学か知らないし、綱海がサーフィンよりもサッカーに時間を費やすようになった原因になった雷門中を、うらんでいた。いや、嫉妬していた。


…とか言っていた昨日の自分が懐かしい。今日、綱海達の大海原中サッカー部と雷門中サッカー部が試合するというので、雷門中を一目見てやろうと一番乗りで観戦席に待機していたら、雷門中が練習を始めた。サッカーに関する知識がほとんどない私でも、雷門中のサッカーがなんかすごいことはわかった。聞いてみたら、なんと雷門中は全国大会優勝校だという。人間技とは思えない技の数々に、私は気付いたら雷門中のファンになっていたのだ。

「お、なまえ来たのか!俺の活躍見とけよ!」
「え、私今日は雷門の応援だから、ごめんね綱海!」
「は?」
「あれ、綱海、彼女?」

寄ってきたのは、ずっとクルクル回りながら練習していた男の子と、色黒のギャルっぽい女の子。

「一之瀬!リカ!おう、こいつは俺の…」
「一之瀬くんとリカちゃんって言うのね!初めまして、私はなまえ!今日は頑張ってね、応援してる!」
「ありがとうなまえ!」
「おおきに!シュートばしばし決めたるで!」

綱海を遮って、二人と握手してもらう。うわーかっこいい!性格も素敵!一之瀬くんとリカちゃん、ますますファンになっちゃう。

「お前なあ…」
「ねえねえ綱海、他の人の名前も教えてよ!」
「いいけどよ、俺のことも応援しろよ?」
「わかってるって」

綱海は苦笑いしてから、雷門中のみんなの名前を教えてくれた。あー、今から試合開始が楽しみ!






俺の彼女、なまえが、なぜかいきなり雷門中に夢中になってしまった。試合開始五分、大海原への声援が圧倒的に多い中、雷門に声援を飛ばすなまえの声はそれに負けていなかった。多分なまえはサッカーのルールとかあんまり知らないと思うが、実況の角間ってヤツの声に合わせて、声援を送っている。

『鬼道がボールを奪ったァ!』
「キャー鬼道くん頑張れー!」
『そして一之瀬に繋ぐ!』
「一之瀬くんいけいけー!」
『綱海がカットする!』
「綱海じゃまー!」
「おい!」

思わず突っ込んだ俺の足元からボールが消える。

「試合中によそ見してたらアカンで!」
「リカちゃんかっこいー!シュートシュート!」
『決まったー!浦部のローズスプラッシュが決まりました!雷門先取点です!』
「キャー!リカちゃんナイシュー!」
「応援おおきにな!なまえ!」

リカがなまえに向かってウインクする。なまえもそれに応え、大きく手を振った。チクショー、俺のこと全然見てねえな、なまえのヤツ!なまえの応援を独占する雷門に、少し嫉妬した。


試合終了後。雷門のとこよりも先に俺のとこに来たなまえに、内心ホッとした。

「綱海お疲れ!」
「お前、俺のことも応援しろよなー」
「ごめんごめん、雷門中がかっこよくって。でも綱海のことも心の中で応援してたよ」
「心の中かよ!」
「でも、サッカーってかっこいいんだね!綱海がサッカー好きになったのも納得できたよ。私もルール覚えて、マネージャーしようかな」
「駄目」
「えー、なんでよ」
「あんまりなまえがサッカー好きになったら、俺が嫉妬するから」

ちょっといじけたような顔で言ってやれば、にんまり笑ったなまえにタオルを被せられた。

「綱海、可愛い」
「なんでだよ」
「私も昨日、同じこと考えてたよ」

顔にかけられたタオルを取ると、少し照れたような、なまえの顔。

「まあ、どんなにサッカー好きになったって、綱海以上にはなり得ないからさ」
「俺だって、お前以上に好きなもんなんかねーよ」

そう言うと、なまえはにっこり笑った。ようやくいつも通りか、と思いきや、雷門のベンチの方から数人が走ってくる。

「応援サンキューな!お前の声、ずっげーよく聞こえたぜ!」
「円堂くん、ほんと?!よかった!」
「励みになったよ、ありがと」
「ううん!お疲れ様吹雪くん!」
「あれだけ応援されると、やっぱりやる気出るなあ!」
「塔子ちゃん達がすごいから、つい応援しちゃうんだよ!」

再び雷門にメロメロな様子のなまえに、思わずため息をついた。俺もぜってー強くなって、なまえが応援したくなるようなプレイしてやる!




さびしがる
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -