とりあえず、クラピカは少女を観察した。リボンで両手を縛られた状態で、赤ん坊のように丸くなって眠っている。服は白いキャミソールのワンピースで、裸足。歳はクラピカよりも少し下くらいだろうか。肌は白く、赤いリボンが映えている。

「……まさか人とは」

魔獣程度なら覚悟していたクラピカだが、人、しかもこんなに大きな女の子は予想していなかった。クラピカは考える。この子の面倒を見させ、手紙の主は一体何が目的なのか?こんなに回りくどい方法をしてでも、誰かに面倒を見させる理由。なにか大切なものを握っているが、扱いは危険を要する?わからない。わかっている要素が少なすぎる…。もしくは、緋の目に何か関係が?

「…どういう……」

クラピカがつぶやいた時、くい、と服の裾が引かれた。はっとして振り返ると、箱の中心に体を起こして座っている女の子。思考に夢中になっている間に、目が覚めたらしい。あまりに気配が希薄だったとはいえ、油断をした自分を諌めるクラピカ。そして取り繕うかのように咳払いを一つして、改めて女の子を見た。女の子は大きな目でクラピカを見つめながら、縛られた両手で、黙って服の裾を掴んでいる。クラピカはその手をやんわりと払い、女の子の正面にしゃがみ、目線を合わせる。

「…君は誰だ?どうして縛られて箱の中にいた?」

女の子は首を傾げる。虐待を受けていたというわけでもなさそうである。

「……名前は?」
「…ナマエ」
「ではナマエ…これまでの記憶はあるか?」

また首を傾げるナマエ。

「私の言っていることは、わかるか?」

今度は少し考えてから、頷く。クラピカは深いため息をついた。諦めのため息である。このナマエという少女には、殺意も悪意も、感じられない。そして、悲しみや驚きすらも。なんらかの念がかけられているのかもしれない。このまま送り返すにも送り主は不明だし、かといって路頭に迷わせるのも気が引ける。一応、言葉は通じている。ならば。

「…私はクラピカ。これからしばらく君の面倒を見る。いいか?」

正直、一番望むものをくれるという話も気になる。一ヶ月程度なら、とクラピカはそう申し出た。ナマエの答えは、笑顔だった。初めてナマエが見せた笑顔に、一瞬体がどくんとなって、毒気が抜かれる。ほっとしたような感じもするし、気が抜けたような感じもした。とにかく不思議な感覚だった。

こうしてクラピカとナマエの共同生活が始まる。

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -