「ナマエの能力ってどんなの?」


シャルナークとフィンクスがひとしきりナマエをいじった後、シズクが聞いた。ナマエは表情を明るくしてシズクの方を見る。

「見たい?」
「見たーい」
「オレも見たーい!」

シズクの口真似をして手を上げたシャルナークを一瞬睨んでから、ナマエは手に意識を集中させた。三人が見守る中、ナマエの手に剣が現れた。それを見たシャルナークとフィンクス、そして珍しくシズクまで驚いたような声を上げる。

「すごいでしょう、これがわたしの能力、ラン…」
「エターナルソード?!」
「うそ、エターナルソードって念で具現化された武器のことだったの?」
「探してもねぇ訳だ!」
「わたしの話聞いて!」

口々に言った三人に、ナマエが怒ったように言って剣を消した。三人は大人しくナマエの言葉を待った。

「わたしの能力は、見たことのある武器をランダムで具現化する能力!今のはたまたまエターナルソードだっただけで、さっき出した時はバズーカだったわ」
「なーんだ…」
「さっきっていつだよ」
「会社にいた時。部屋に知らない人の気配がしたから、気付いてほしくて…でも扉まで手が届かないから、扉に向けてバズーカ撃ったの」
「バズーカであの威力かよ?!」
「あら、ハロウィンカンパニーの最新防弾技術を舐めないでね!ありとあらゆる武器で試したけど傷つかなかったんだから」
「ナマエ、苦労してるね」

シャルナークがナマエの肩をぽんぽんと叩いた。逃げようとするナマエもナマエだが、最新技術でそれを止めようとする社長も社長だ。そりゃ逃げたくもなるよねー、とシズクも同意する。

「でもランダムって、不便じゃない?」
「んー、でもわたしが武器って認識した物だけだし…ミョウジカンパニーの武器がほとんどだから」
「じゃあ例えばあたしのデメちゃんは?」

シズクはデメちゃんを具現化し、ナマエに見せた。

「念でできた武器は具現化できないわ、特別な付加要素がいっぱいあるし。それに、それは武器って言うより掃除機として認識しちゃうし…」
「そっかぁ」

シズクは少し残念そうに言うと、デメちゃんをしまう。と、そこにクロロが降りてきた。自然と会話は途切れ、四人はクロロの方を見る。

「ナマエ、少し来てくれないか?」

クロロは一直線にナマエの元に来ると、その腕を取った。ナマエがちら、と他の三人を見ると、行っておいでという表情をしている。ナマエはクロロに頷くと、腕を引かれるままリビングを出て行った。

廊下に出ると、玄関とは反対方向にいくつかのドアと、螺旋状の階段があった。

「一階はだれの部屋?」
「一階は今いたリビングとキッチンとシャワー、あと無人の部屋だ。団員は皆上の階に部屋がある」
「へぇ、廃虚みたいだと思ってたけど、水道は通ってるのね」
「無断で引いた水道だが」

クロロがすました顔で言って、階段に足をかけた。一瞬顔を引きつらせて足を止めたナマエだったが、それがここでの日常だと考え受け止めることにした。どうした?と振り返って聞いてくるクロロの後を追って階段を上る。二階には一階よりもたくさんのドアが並んでいる。

「本当は俺の部屋の隣が良かったんだが、俺の部屋は三階全部だからな…ナマエはパクの部屋の隣だ」
「パクの隣?良かった!」

嬉しそうにしているナマエを見て、クロロも穏やかな笑顔を見せた。

「中を見てもいい?」
「もちろん、見せたくて呼んだんだ」

クロロがドアを開けて、少し照れながらナマエが部屋に入る。ドキドキしながら内装を見て、ナマエは目を丸くした。廃虚の薄暗い廊下から一転、室内はオレンジの優しい光に包まれている。家具は白に統一されていて、シンプルでとても綺麗な感じの部屋だった。

「すごい、いつの間にベッドまで…」
「気に入ったか?」
「うん、すごく!ありがとう、クロロ」

ナマエににっこりと笑いかけられ、きゅんとしたクロロは思わずナマエを抱きしめようとする。が、ナマエは意図してかせずか、するりとそれを避けると、ふかふかのベッドにダイブした。虚しく空を抱いたクロロは、寂しそうにナマエを見る。嬉しそうにベッドでごろごろしていたナマエは視線を感じて起き上がると、もう一度にこりと笑った。その笑顔を見たら、ついついクロロも笑顔になってしまう。

「部屋は好きなようにして構わない。皆自分の好みに改装してるからな。それから、何か欲しい物があったら言え」
「盗るの?」
「盗った方が手っ取り早いが…ナマエが嫌なら、ちゃんと買おう。金ならあるからな」

ナマエと並んでベッドに腰掛けると、クロロはナマエの頭を優しく撫でた。ナマエはくすぐったそうに笑う。あれ、これはいい雰囲気なんじゃないか?とクロロがにやけ始めたとき、部屋の扉がノックされた。







「ナマエ、ジャポン料理平気…か……」

顔を覗かせたノブナガは、部屋の中の状況を見て、一気に青ざめた。クロロの顔は直視できないほど恐ろしい。一方空気の読めないナマエは、ベッドを降りるとノブナガに近付きながら言った。

「わたし、ジャポン料理なんて食べたことない!ノブナガが料理するの?」
「あ、あー…まあそうだな、今日の料理当番は俺だからな」
「見てもいい?」
「え!いや、今度見せてやるよ…今はホラ、団長と話してたんだろ?」

ノブナガは必死にクロロの元に戻るよう遠回しに説得するが、ナマエはどうしても料理を見たいと言う。ノブナガが途方に暮れていたとき、クロロが立ち上がった。

「今日は俺が作ろう」
「え!クロロもジャポン出身なの?」
「出身じゃないが知識はある」

さりげなくナマエの肩を抱き部屋を出ていったクロロの後ろ姿を見て、ノブナガは思わず胸を撫でおろした。







クロロの作った料理は寿司だった。ナマエが横で感心しながら見ていたので、作っている間のクロロは終止にやけ顔であった。ノブナガはソファーの辺りで、ウボォーやフィンクスにからかわれたり、パクノダに慰められたりしていた。

食事はテーブルだけでは席が足りないので、ソファーも使うらしい。最も、テーブルが埋まるだけの人数がアジトに残っていることは稀だ。公平なジャンケンの結果、ナマエの席はテーブルで、クロロとマチの間だった。右隣に座るクロロを見て、本当に公平だったんだろうかとナマエは少し考えたが、寿司の盛られた皿が運ばれて来ると、そんなことは頭から吹き飛んでいた。ナマエが綺麗なピンク色のサーモンを一つ取ってそのまま食べようとすると、左隣のマチがそれを制止した。

「待ちな、ナマエ」
「え、何?」
「寿司は醤油をつけて食べるとおいしいんだよ」

マチは、醤油の入った小皿をナマエの方に近付けた。ナマエがよくわからないという顔をしていたので、マグロの寿司で見本を見せる。

「へぇ、マチ物知りなのね」
「そんなことないよ、ジャポンの文化は好きなんだ」

褒められたマチは少し照れ臭そうに、顔を隠したナマエ。はそんなマチ見て小さく笑って、彼女を真似て醤油をつけ寿司を食べた。

「ほんと、おいしーい」
「団長に言ってやんなよ」
「クロロ、おいしいよ」
「当然だ」

すまして言いながらも、クロロの口は嬉しそうに歪んでいる。それを見つけたナマエは、かわいいところもあるじゃない!と一人微笑んでいた。ソファーの方からはフィンクス、ウボォー、ノブナガの騒ぐ声と、それに対するフェイタンの悪態が聞こえてくる。フェイタンは運悪く、強化系の騒がしい三人組の中に入ってしまったのだ。ナマエはちらっとフェイタンを盗み見た。他の団員達とは数時間でだいぶ馴染んだが、フェイタンだけはまだ話してもいない。この先ここに住ませてもらうなら、フェイタンともぜひ仲良くなりたいと考えているナマエだが、まだ道のりは遠そうだ。よし、と小さく気合いを入れると、ナマエはすでになくなりつつある寿司の皿に箸を伸ばした。






あたらしいおうち




おまけ

ナマエの念能力
おまかせ武器創造人
(ランダムクリエイター)

ナマエが過去に見て武器だと認識した物がランダムで具現化される。ただし他人の念能力で具現化された武器を具現化することはできない。また、具現化した武器はナマエしか使うことができない。一回出した武器は60分以上経たなければ他の武器に変えることはできない。

彼女が認識している武器のほとんどがミョウジカンパニー製の武器であるためミョウジ、カンパニー製の武器が具現化されて現れる可能性が高い。また、確率は平等ではないため、二回連続で同じ武器が出るようなことも稀にある。

特に武器に付加要素もないので、武器を持ち運ぶ手間を省くことと、何が出るかというギャンブル的な要素を楽しむための能力だと思われる。


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -