目の前には真っ白なドレス、そして泣いてるママと、穏やかに笑っているパパ。挙式を明日に控えたあたしは、ただ静かに二人の前に座っていた。

あたしが大切な人を連れて来た時、二人は全く反対をしなかった。そうなるだろうとは思っていたけど、やっぱりほっとした。パパはドラマなんかで見る頑固親父とは真逆の人だし、ママはふわふわとしたマシュマロのような世界に生きている人だ。けれどあたしはあの日、今までで一番真面目な顔をした二人を見た。パパは頑固親父などより全然迫力があったし、ママは別人かと思うほどしっかりして見えた。二人はその表情で、本当にあたしを幸せにしてくれるのか、と彼に聞いた。あたしをどれほど大切に思ってくれているかわかって、泣きそうなくらい嬉しくなった。彼も真剣な顔で、しっかりとはいと答えた。




「ねえママ、パパ。小学生の時、紅葉を見に行ったことを覚えてる?」
「もちろんよ、ひな」

ママは涙を拭って微笑んだ。

「あの時の景色、本当に綺麗だった」
「そうね、でもどうして急に?」
「わからないけど。でもあの時ね、パパとママはどうして、ムズムズするようなことを平気で、照れずに言えるのかなって思ったんだ。あたし、恥ずかしくて、言えないし」
「やだ、なあに、それ」
「けど、あたしも今なら言えるかな、って思うんだ」
「どうして?」
「だって、本当の気持ちだもん。こんなに大きな気持ちを持つことが今までなかっただけで、ママとパパが特別とかじゃなかったんだなって」

パパとママはなんだかキョトンとしている。あたしは二人に頭を下げた。

「パパ、ママ、あたしを産んでくれて、今まで育ててくれて、ありがとう。今までのあたしの人生は、二人のおかげで最高に幸せだったし、これからもきっとパパとママにはたくさん助けてもらうと思う。あたしの両親が、パパとママで、よかったよ」

ママは泣いてしまって、パパがそっとその肩を寄せた。本当に、大袈裟とかじゃなくて、二人はあたしの理想の夫婦だ。ママは料理上手で優しくて可愛いし、パパは仕事ができて頭が良くてかっこいい。あたしも大切な人と、パパとママみたいな関係になりたい。

「ヒロトくん、私、幸せだわ…」
「俺もだよ」
「私、ひながお嫁に行っちゃう日は、もっと寂しくて悲しくて、辛いと思ったの。でも今は、どうしようもなく幸せ。私も、ひなが私達の子でよかった。たくさんの幸せをくれて、ありがとう、ひな」
「これからはひなが幸せになる番だね」

あたしはパパとママに抱き着いた。ありがとう、あたし、幸せになるね。



かみさまがきみをえらんだわけ

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