「ナマエ、弱ぇー」
「キルアくんが強すぎなんじゃないかな…」
「それもあるけど、ナマエも弱いって」
20回勝負して20回とも負けたナマエは、自分の使っているみつあみの女の子に申し訳なくなってきた。そのみつあみの女の子も、キルアが使えば強いのだけど。
「ナマエはさー、普通にパンチかキックしかしないからダメなんだよ」
「だ、ダメって…」
「正面から攻撃してくるばっかじゃ、全部カウンターしとけば勝てちゃうし」
コントローラーのコードを持ってプラプラさせながら、キルアは言う。カウンターの仕方もわからないナマエは、正面から攻撃するしかなかったのだが。
「そういえば、ナマエ腹減ってない?」
「あ、空いてる」
朝食を戻してしまっていたので、胃は空っぽだ。ゲームに夢中になっていて忘れていたけど、キルアにそう言われ、だんだんお腹が空いてきた。ナマエが時計を見れば、まだお昼までは時間がある。
「菓子あるぜ」
「食べていいの?」
「うん。大量にあるから」
ニッと笑って立ち上がると、キルアは棚から、腕いっぱいのお菓子を出してきた。
「チョコでいい?」
「うん。ありがとう!」
自分もスナックを開けながら、チョコの箱をなまえに渡すキルア。ナマエは嬉しそうにそれを受け取り、すぐに口に入れた。
「おいしーい」
「へー、スゲー」
「なにが?」
「ホントにもう下剤は平気なんだ」
「え、入ってるの?!」
「兄貴が下剤なら大丈夫って言ってたから」
なんとなくキルアに裏切られたような気分になり、ナマエは落ち込んだ。それを見たキルアがフォローするように付け足した。
「でもさ、そのチョコは下剤だけど、オレのこの菓子はもっとスゲー毒入ってんだぜ?それに味変だとか思わなかっただろ?」
「思わなかったけど…」
「もう下剤盛られても、ナマエには効かないじゃん!」
「そんな機会ないって!」
ナマエが少しむきになって言い返すと、キルアは楽しそうに笑った。
「腹ごしらえしたし、次のゲームいくか!」
「次はなんのゲーム?」
「パズルー」
ナマエでも、格ゲーよりは勝ち目がありそうだ。
「勝ったー!」
「ちぇー、ナマエパズルは強いんだな」
「頭の差かな?」
「ウゼー」
パズルに変えてから、どっちかと言えばナマエの方が多く勝っていた。キルアは口を尖らせて転がった。それを見て、なまえは笑いながらキルアの横に寝転がる。今日の数時間で、二人は随分仲良くなっていた。
「ゲーム面白いね」
「だろ?」
尖らせていた口をニッと歪ませ、キルアはナマエの方を向いた。しかしその一瞬後には、飛び起きて身構えた。そのキルアの態度にびっくりしながらも、ナマエも体を起こす。部屋の扉が開いた。
「ただいま」
「いっいっイルミさん…!」
てっきりさっきのメイドが迎えに来ると思っていたナマエは、突然のイルミの登場に慌てた。キルアはと言うと、部屋の前にいた殺気の正体がイルミとわかり構えを解いた。
「キル、特訓してた?」
「おー、したした」
「え…」
「じゃあナマエ、部屋に戻るよ」
イルミに腕を掴まれ、抵抗できないナマエはそのまま引きずられていく。名残惜しそうにキルアを見ると、キルアはウインクをしながら、ゲームを指差した。
「暇だったらまた来なよ、相手してやるから」
扉が閉まる前に、キルアはそう言って手を振った。
おかえりなさい、地獄!
(間違えた、イルミさん!)