「わたしはイルミさんのことが、好き、です」
ナマエはもう一度、ゆっくり言った。言い終えてから、みんなの痛いほどの視線に、どんどん顔を赤くして、うつ向く。イルミは大きな目をいつも以上に真ん丸に見開き、ナマエを見ている。同じようにナマエを見ていた旅団の視線が、徐々にイルミに移った。
「いや、あの」
表情は変えていないが、今イルミは珍しく混乱していた。もちろん、ナマエの気持ちが嬉しくないはずがない。自分の気持ちにはすでに気付いていた。ナマエについて調べたということを言うか迷った日から数日考え、イルミもナマエのことが好きで、大切で、離したくなかったのだと、気付いたのだ。しかし、今のタイミングで答えるべきなのか。どう考えても、ややこしい方向にしか事は進まないだろう。
「…ナマエ」
「あっ別に、知っていて欲しかっただけで、イルミさんの答えを聞きたいわけではないので…!」
ナマエは真っ赤な顔を上げ、慌てて言った。イルミはナマエの勢いにおされ、曖昧に頷く。その時、微妙になってしまった雰囲気を変えるように、パクノダがパチンと手を叩いた。放心状態だった旅団メンバーが、パクノダの方に注目する。
「今の話は置いておくとして、この後ナマエはどうするつもりなの?」
言われたナマエは、ちら、とクロロを見た。
「旅団は…どうなってるの?わたしの番号は?」
「ああ…8番には今他の男が入っている」
クロロは少し申し訳なさそうに言った。ナマエはもう死んでしまったと思い、次の人間を入れてしまったのだ。ナマエは、やっぱり、というように笑った。
「ナマエなら倒せると思うが」
「ううん、いいの」
「それって、ゾルディックに残りたいってこと?」
クロロの言葉を、意外にも穏やかな笑顔で断ったナマエに、シャルナークが詰め寄った。
「オレは構わないけど」
イルミも、少し控えめに申し出るが、ナマエはそれにも首を振った。
「え…それじゃあ、ナマエはどうしたいんだい?」
「わたし、ハンターライセンスを取ったの。だから、ハンターになろうと思って」
ナマエの言葉に、旅団メンバーは驚いたような声を上げた。
「賞金首ハンターじゃないよね?」
「まさか!わたしだって元幻影旅団なのに」
一応聞いたシャルナークに、笑って返すナマエ。
「まだよくわからないから、ハンターの仕事を見てから決めたいと思ってるけど、いろんな世界を自分の目で見ることができるのって、素敵じゃない?」
そう楽しそうに話すナマエを見て、イルミも旅団メンバーも、止めることはしなかった。
「…いつでも戻ってこい。ナマエなら、空き番がない時でも大歓迎だ」
「うちにも好きなときに来ていいから。キルも喜ぶだろうし」
「ありがとう、クロロ、イルミさん」
ナマエは声をかけてくれた二人に向かって笑った。クロロもイルミも、その顔を見て、微笑んだ。
終わりは、始まり