「団長、団長ー!」
「団長なら、ずと部屋に閉じこもてるよ」

シャルナーク達がパーティー会場から戻ると、アジトではフェイタンとフランクリンが酒を飲んでいた。クロロはずっと部屋から出てこず、ダーツの成分を調べている。早くリングを持ち帰ったことを知らせたくてソワソワしていると、クロロの部屋の扉が開いた。自然と団員達の視線はそこへ集まる。クロロは珍しく、顔に疲れが現れていた。

「帰ってたのか」
「パンドラリングは盗って来たぜ」
「念が強すぎて、一人で長時間持ってられなくて大変だったよ」

マチの言う通り、あまりに強い念のせいで、リングを数時間持っていると、持ち主は気分が悪くなってきてしまうのだ。4人は数時間ごとに運ぶのを交代しながら、リングを持ち帰ったのだった。

「ご苦労だったな。俺の方も解析が終わった」
「どこの鉱石だったんだ?」
「あらゆる観点から調べてみたが、ほぼ間違いない。ククルーマウンテンのものと見ていいだろう」
「ククルーマウンテンって…そうか!ゾルディック!」
「ゾルディクて、あの有名な暗殺一家か?」
「ああ。おそらく、何らかの形でナマエはゾルディック家と関わっている」

クロロはパクノダから差し出されたミネラルウォーターを一気に飲み干すと、真面目な表情になる。

「もしナマエが今もゾルディック家にいるとしたら、盗み出すのはかなり困難と考えていいだろう。しかし煙は、対象者が近くにいなかった場合、行き場をなくして消えてしまう。最低でも、ナマエが見えている範囲でリングを壊すのが望ましいだろう」
「出掛けるのを待つ?」
「その前に、本当にゾルディックにいるのかを確認しなきゃ」

パクノダの言葉に、クロロは頷いた。

「確認っつったって、ククルーマウンテンなんか入るだけでも大変って話だぞ」
「だが、あまり時間がない。できればゾルディックとは関わりたくはなかったが…」

クロロが苦い顔をしてそう決断した時、アジトの扉が開く音がした。反射的に全員が身構える。クロロは元々気付いていたのか、ゆっくり顔を上げた。

「ヒソカか…」
「ばれてた?」

自身の完璧な「絶」を見破られ、興奮したような表情を見せるヒソカ。それを見たマチが、はっきりと嫌そうな顔をした。

「お前がアジトに来るなんて珍しいな」
「いい情報を持って来てあげたんだよ」

ヒソカはそう言って、ニィと口角を吊り上げる、彼独特のいやらしい笑顔を見せた。クロロはその言葉に、微かに眉を潜める。

「いい情報だと?」
「ナマエの情報」
「!」
「もちろんタダじゃ、教えてあげないけどね」

クロロの顔が、驚いたようなものに変わった。ヒソカはそれにますます興奮したのか、笑みを深くする。

「その話は後で聞こう。ナマエの情報というのが本当だとわかってからだ」
「オーケー」
「話してみろ」

ヒソカはニヤニヤしたまま頷いた。

「ナマエはイルミのところにいるよ」
「イルミって誰だ?」
「イルミ=ゾルディック」

割り込んできたフィンクスの問いに、ヒソカが答える。団員達は、直前まで話していた名前が挙がり、若干ざわついた。クロロは難しい顔のまま表情を変えない。

「証拠はあるのか?」
「ナマエと直接話したよ。イルミに随分なついてたみたいだったね」
「普通に話したのか?」
「ボクや旅団や自分の念のことはすっかり忘れてたけどね、面白かったよ」

ヒソカが意地悪く笑うが、クロロは真剣な表情を崩さず、考え込んでいた。すでにヒソカは視界に入っておらず、自分の世界に入り込んでしまっている。

「団長…このウソつきの言葉信じるのかい?」
「ヒドいなぁマチ。ま、信じるのも信じないのもクロロ次第だけどね」
「いや…信じよう。俺のケースと照らし合わせて考えても、ヒソカの言ったことには矛盾がない」

そう言うとクロロは立ち上がり、集まっている団員達を見回した。ナマエが抜けてから、何度か団員は入れ替わっている。ナマエを知らない団員も何人かいる。クロロは結成当時からのメンバー達を指名した。

「ノブナガ、シャル、マチ、ウボォー、フェイ、フランクリン、フィンクス、パク。今回はこのメンバーでの仕事だ」

名前を呼ばれた8人は、クロロに力強く頷いた。

「屋敷に侵入してナマエを探し出し、見つけ次第捕まえる。最悪、足止めして俺に連絡をしろ。現在のナマエは足止め用の妙な念を使う。恐らく、あのダーツが関係しているだろうから、気を付けて動くこと。それからゾルディックとの交戦は避けられないだろうから、必ず2人1組で動いてくれ」
「わかったわ。決行は?」
「パドキアまで移動するのに、2日はかかるよ」
「そうだな…4日後だ。明日出発する。今日中に準備を済ませろ」

クロロの言葉に、実行メンバーは気を引き締めた。ゾルディック家に踏み込むからということももちろんあるが、やっぱりナマエが関わっていると思うと、自然と力が入ってしまう。仕事がないとわかった団員達は、バラバラと帰って行った。ヒソカも、また連絡するよ、とクロロに笑うと、アジトを出て行った。



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