翌朝、シャルナークがアジトに到着すると、クロロは前日にフィンクスにしたように、ダーツを見せながらナマエと会った時の事と、パンドラリングの呪いを解く方法を話した。シャルナークも驚いてはいたが、クロロの真剣な表情を見て、信じることに決めた。

「それじゃあオレはパンドラリングの捜索と、そのダーツの分析してみるよ」
「ああ、俺はナマエの現在地を調べる」

クロロはそう言うと、ダーツをシャルナークに渡して再び自室に戻った。急いでアジトまで戻って来たシャルナークは、とりあえず何か飲む物を探して、冷蔵庫を探り始める。ソファーからその背中を見ていたフィンクスは、少し身を乗りだし尋ねた。

「オレは何かすることあんのか?」
「んー、最終的な実行メンバーには加わってもらうと思うけど、筋肉バカのフィンクスに下調べの作業は無理だろうし、ないかな」

爽やかな笑顔を浮かべてシャルナークが言った言葉で、フィンクスの額に青筋が浮かんだ。

「誰がバカだぁ?」
「オレは筋肉バカ、って言ったんだよ」
「どっちにしろバカにしてんだろーが!」
「ほらー、そうやってすぐ手が出る辺りが筋肉バカって言ってんの」
「うるせぇちょっと表出ろ!」
「団員同士のマジギレはご法度だよ、フィンクス」

拳を振り上げたフィンクスを見て呆れ顔のシャルナークは、冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターをグラスに注いだ。

「飲む?」
「いらねぇ!」

ふいっとわざとらしくシャルナークから顔を背けると、フィンクスはテレビをつけた。タンクトップの男がオーバーリアクションでトレーニング用品の解説をしている、通販番組が映る。

「お、フィンクスの好きそうなの売ってるじゃん。買ったら?」
「うるせぇっつーの!買わねぇよ!」

グラスを持ってソファーの後ろに立ち、楽しそうに笑うシャルナークに、フィンクスはテレビを消して部屋に戻ってしまった。乱暴に扉を閉める音が聞こえて、シャルナークは苦笑する。それから携帯を取り出し旅団員全員に向けてメールを打つと、自身も部屋に入っていった。






自室で愛用のパソコンに向かっていたシャルナークは、ふー、と大きなため息をついた。一般向けの大型掲示板からハンターサイトの情報まで漁ったが、信憑性のあるパンドラリングの情報は出てこない。ナマエが行方不明になると共にどこかへ飛ばされたとは言え、あれから一年以上も経っているのだ。すでに誰かが見つけて所有していると考えた方が有力だろう。

「時間ないのになぁー」

シャルナークはイスの背もたれに体重をかけた。背もたれはギシッと少しだけ軋んだ音をたてた。クロロの見つけた呪いの解き方は、直前に呪いをかけられた者のみを対象としていた。時間が経てば経つほど、他の人間に呪いがかけられる可能性も高くなり、それは同時にナマエの呪いが解けなくなる可能性も高くなるということなのだ。グラスに少しだけ残っていた水を飲み干すと、シャルナークは思い出したように、机の上に置いていたダーツを手に取った。それの分析もまた、シャルナークは引き受けていたのだ。

ダーツの針の部分を少しだけ削り取ろうとナイフで擦るが、針はびくともしない。少し力を入れてみれば、ナイフの方が削れてしまった。イラッとしたシャルナークは、ナイフを思いっきりダーツに突き立てる。しかしダーツは相変わらず傷一つ付かず、ナイフがパキンと折れてしまった。

「…なんだこれ」

折れたナイフを部屋の角にあるゴミ箱に投げ捨てると、ダーツを睨んで言う。ダーツの両端を握って渾身の力を込めてみても、ダーツはしなりもしなかった。針の部分も柄の部分も、かなり硬度の高い合金で作られているようだ。しばらくそれと格闘したシャルナークだが、終いには諦めて、小さく呟いた。

「いいなぁ、これ」

分析するよりも武器としての使い勝手の良さに感心したシャルナークは、机の上に戻したダーツを眺め、こんなものを手に入れるなんて、ナマエは今どこで何をしているのだろうか、と考えた。傷一つないダーツの矢は、窓から射す光を微かに反射して輝いていた。



君を探す、君を想う
(そういえば、なまえの声どんなだっけ?)
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