一筋の光で目が覚めた。ナマエがゆっくり体を起こすと、開いた扉の隙間からザジの声が聞こえてくる。

「部屋に残っている受験者の諸君、試験終了だ。出てきてくれ」

発狂してしまった受験者達は、先に部屋を出され、隔離されていた。ナマエは慌てて立ち上がり、簡単に服と髪を整えて、袋を持って部屋を出た。

「ご苦労だったな諸君。では…ここに残った12名を、二次試験合格者とする!」

ザジの言葉に、残った12人の受験者達は歓声を上げた。ナマエもほっとしたように笑った。そんなナマエの元に、マサムネが近寄ってきた。

「ナマエも合格か」
「うん、3日ぶりだね、マサムネ」
「そういえばそうだな」

笑顔のマサムネにぽんぽんと肩を叩かれ、久しぶりの自分以外の感触に、ナマエは安心するような感覚がした。

ドームを出ると、3日前とは別の飛行船が待っていた。これからさらに2日かけて、三次試験の会場に移動するらしい。さらに今回は一人一人に個室が与えられたが、みんな個室には入らず、食堂や廊下でたまっていた。しばらくは一人になりたくないのだろう。ナマエは今回の試験で唯一知り合いと言える、マサムネと一緒にいることにした。話を聞けば、マサムネは美食ハンターを目指しているらしい。背も高く筋肉もあるマサムネを見て賞金首ハンター辺りだろうかと予想していたナマエは、それを聞いて驚いた。

「じゃあマサムネ、料理できるの?」
「失礼だな、お前!俺はな、幻の魚とか実際にはいないって言われてる、キメーラフィッシュって魚を捕まえて、親父の寿司屋で出すのが夢なんだ」
「スシ?」
「なんだナマエ、寿司も知らねぇのか!試験が終わったら作ってやるよ、ついでに俺の料理の腕も見せてやるからな!」
「へぇ、ありがとう!」

マサムネの言葉に、なまえは嬉しそうに笑った。もうすっかり仲良しだ。それからの2日間、ナマエは暇な時間をマサムネと過ごしていた。






2日後、飛行船が到着したのは、絶壁にぽかんと開いた洞窟の前だった。どうやらそこは無人島らしく、後ろには海が見えた。受験者達が全員飛行船から降りると、洞窟の前には二次試験のときと同じように、試験官が立っていた。ただしひょろっと背が高く中年だったザジに対し、次の試験官はずいぶんと若いようだった。いや、若すぎると言ってもいいだろう。なんと言ったって、子どもだったのだ。

「あたしは三次試験の試験官、ビスケット=クルーガー。ビスケでいいわ。三次試験はここでお宝探しをしてもらう!」

ビスケは人差し指を立ててウインクを一つすると、洞窟を指さした。しかし受験者達の視線は明らかに洞窟ではなく、ビスケに向いていた。ビスケは気にすることもなく、説明を続けていく。

「この入り口から入ってずっと下ると、鍾乳洞に出るわ。そこで受験者には、『クリスタル・ロゼット』っていう宝石を探してもらうわ。これ、覚えてね」

ビスケはこれ、と言いながら、手の平ほどの大きさの宝石を取り出した。微かに青みを帯びた透き通った石が重なり合っているそれは、青いバラのように見えた。受験者達は思わず、それに見入ってしまう。

「クリスタル・ロゼットって名前だけど、実際にはこれは水晶じゃないの。水晶は鍾乳洞にはできないからね。これは見た目が水晶に似たある特殊な鉱石で、扱いが非常に難しいの。この、バラのような形のまま持って来れた受験者だけが合格」

ビスケはうっとりしたような目でクリスタル・ロゼットを見つめ、そっと指で撫でる。しばらくそうしていた後、再び受験者達に目線を戻した。口元はニヤリと歪んでいる。

「期限は二週間。中にはもちろん、毒を持った蛇やコウモリもいるし、食用にもできる動植物なんかもいるわ。水の補給は洞窟の外に出てきてすること。あっちに湧き水があるから。もう無理だと思ったら、リタイアして二週間外で過ごしてもいいわよ」

ビスケの言葉に、数人が笑った。ここまできて、リタイアなどするわけがないという意味だろう。

「事前に見た様子だと、8個くらいは採れそうだったわ。ただし、粗末に扱ったらすぐに壊れるから、気を付けてちょうだいよ!それじゃあ説明は以上。何か質問は?」
「ある。妨害はアリか?」
「愚問ね、当然よ。でもこの試験は他の受験者より、宝石を採ることだけ考えた方がいいと思うわよ?」

可愛い顔に似合わないニンマリ笑顔を見せたビスケ。質問をした男はフンと鼻を鳴らす。

「他はない?じゃあ三次試験、開始!」

ビスケはきょろきょろして他に質問がないことを確認すると、片手を上げてそう叫んだ。受験者達は一斉に洞窟に駆け込んだ。なまえもそれに流されるような形で、洞窟に入って行った。残ったビスケはニヤニヤしたまま伸びを一つして、昼食をとるために飛行船へと入って行った。



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