2日かけて到着した二次試験の会場は、ドームのような建物だった。全員が飛行船から降りると、ドームの入り口に立っていた男が口を開く。

「ようこそ諸君、私は二次試験の試験官、ザジと言う。ミヤビの試験でずいぶんと人数が減ったようだな。折角部屋をたくさん用意したのだが」

ザジは受験者達を見てにやにやしながらそう言うと、ドームの中に入るよう指示した。中に入るとひたすら廊下が続いていて、等間隔でたくさんの扉がある。

「二次試験の内容は実に単純明確。受験者の諸君には72時間、光と音のない、完全に孤立した状態に耐えてもらう。食料は事前に3日分用意したので、それを持って部屋に入ってくれ。説明は以上だ。質問のある者はいないか?」

受験者達の沈黙を肯定ととったザジは、食料の入った袋を配った。それを受け取った受験者達は、それぞれ好きな扉を選んで入って行く。全員が部屋を選んだのを確認すると、ザジはにやっと笑って告げた。

「二次試験、開始」

同時に全ての部屋の扉が閉まり、全ての部屋は孤立した状態になった。これから72時間の耐久戦が始まる。

「さて、何人が狂わずに合格できるだろうかね?」

ザジは楽しそうに呟くと、モニターのある自室へ戻って行った。




開始から30時間後、最初の犠牲者が出た。モニターの中では、一人の受験者が突然発狂しだしていた。無音の暗闇に耐えられなくなったのだ。それを機に、次々とおかしな行動を始める者が現れる。60時間を過ぎた時点で、正気で残っている受験者は25人になっていた。ザジは時計を見て、さらににやにや笑いを深くする。

「ここからが一番辛い時だ。さあ何人おかしくなる?」

ザジの言葉通り、60時間を過ぎるとまた発狂する者が増えた。無理矢理扉を開けて出ようとした者には、ザジが扉に高圧電流を流し気絶させた。そんな中、ナマエやマサムネはまだ残っていた。






(楽しいこと、楽しいことを考える!)

ナマエは暗闇の中、ひたすら自分にそう声をかけた。無音の世界にたった一人で閉じ込められる閉鎖感。元々一人でいるのはあまり好きじゃないが、音と光が一切ない状態がこんなに辛いとは思わなかった。時計もないので、今がどれくらいの時間か、あとどれくらいあるのかもわからない。唯一手の届く範囲に置いてある袋を手探りで探し、手を突っ込んで、残りのパンを確認する。パンは残り二つで、もしナマエの体内時計が間違っていたら、空腹にも耐えなければならなくなってしまう。そんな不安を抱えながらもナマエはパンを半分ちぎって袋にしまうと、ちびちびと食べ始めた。

「まだかな…」

暗闇に向かって呟くが、その自分の声も闇に溶けて聞こえない。声を出しても聞こえず、自分自身の体すら見えない真っ暗闇、それはまるで自分が存在しなくなったかのような恐怖を覚えた。不安ばかりが胸の中でぐるぐるする。実は、パンにはほんの微量の薬が入っていた。ギリギリ合法のその薬は、眠気を抑えるが、副作用として、不安な気持ちになったりするというものだった。
ナマエは首を振って、不安を追い払い、他のことを考えようとした。イルミは今、仕事中だろうか。キルアはゲームをしている頃だろうか。そういえば最近は毒の入ってない物しか食べていないけど、次にゾルディック家に行ったとき、まだ耐えられるだろうか。ふと気付けば、今のナマエの記憶はゾルディック家でのことばかりだ。ナマエはふー、とため息をつくと、ごろんと寝転がった。床で寝るのは大得意だし、寝ていた方が寂しさも紛れるだろう。半分のパンを食べきってしまうと、ナマエは眠りに落ちた。



暗闇で二次試験!
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