翌日の朝、念を心得ているメイドに念の基礎知識を教えてもらったナマエは、ようやく系統についても理解した。また、まだ自分が使えない「円」や「流」などの応用技があることも知った。教えてもらったメイドに礼を言うと、ナマエは能力を考え始めた。しかし考えていると浮かんでくるのはやはり、ヒソカに言われた過去の自分の能力だった。フェアリーテイルにワンダーグロウ、どちらもおそらく操作系の能力なのだろう。名前から能力の予想がつきやすそうなのは、多分、

「ワンダーグロウ…」

ナマエは小さく呟くと、自分の手を見つめて、開いたり閉じたりした。グロウ、とつくくらいなのだから、何かを育てる能力だったのだろうか。あまり戦闘向きな能力だったとは思えない感じだ。やっぱり、使うなら戦闘で使えるような念能力がいい。ナマエは首を振ってその二つの名前を頭から追い出し、再び新しい能力を考える。

「ナマエ、考えた?」
「まだです…」

仕事を終えて帰ってきたイルミが部屋に顔を覗かせた。悩みながら床でごろごろしていたナマエを見て、ため息をつく。

「オレ今日は午後からも仕事あるから」
「あ、じゃあキルアくんのとこ行ってもいいですか?」
「…いいよ」

ちょっと複雑そうな顔をして、イルミは頷く。対称的に、ナマエは嬉しそうな笑顔を浮かべた。

「そういえば、キルに念の話はしないでね」
「なんでですか?」
「なんでも。したら殺すよ」
「はい!」

久しぶりに殺す、と言われてナマエはびくっとした。元々その日は朝から念のことばかり考えていたから、キルアのところに行って気分転換したかったのだが、改めてイルミから言われると緊張してしまう。

「今日中にイメージぐらいは考えといてね」
「はーい」

イルミは準備があるのか、それだけ言うと部屋を出て行った。ナマエは廊下まで出てそれを見送ると、近くにいたメイドに頼んで、まだ道のりを覚えられないキルアの部屋まで送ってもらった。

扉の前についたナマエはノックをするが、返事がない。メイドは今ならキルアはいると言っていたので、気付いていないだけだろう。ナマエはもう一度ノックをしてから、そっと扉を開けた。

「キルアくん?」
「う、わ!」

ナマエが遠慮がちに声をかけると、キルアはかなり驚いて、慌てて何かを背中に隠した。普段なら部屋の前に人が立っただけでも気配で気付くキルアらしからぬ行動に、ナマエも驚いた顔をしている。別に「絶」を使っていた訳でもないのに。

「ご、ごめんね、ノックはしたんだけど」
「や、べ、別にいいけど、どうしたの?」
「んー、イルミさんが仕事だって言うから、キルアくんと遊ぼうかなって思って…ところで、何隠したの?」
「は?!別になんも隠してねーけど」
「うそ!」

ナマエがキルアの後ろに回り込もうとすると、それに合わせてキルアも回った。痺れを切らしたナマエは、キルアに飛び付いた。

「うわあああ!」
「ほら、隠してた!」
「ちょっ、おま、離せって!」

抱き着いた腕で、そのままキルアが後ろ手に隠していた物を取ったナマエは、得意そうにキルアに言った。一方のキルアは、真っ赤になってナマエの腕の中で暴れている。ナマエが大人しく離れてからも、キルアの顔は赤いままだ。

「ナマエばっかじゃねぇの!」
「キルアくん照れてるー」
「女ならもっとそういうの気にしろよ!」

ナマエがにっこり笑うと、キルアは余計に赤くなってナマエを睨んだ。しかし照れ隠しとわかっているナマエは、笑顔のままだ。かわいい。

「で、何を隠してたのかな?」
「あっ」

キルアの手から取った物を広げるナマエ。キルアは一瞬自分の手を見て、いたずらがバレた後のような顔をした。ナマエの手に握られていたのは、一枚の紙だった。

「んん?ハンター試験申し込み書?」

ナマエが紙に書いてあった言葉を読み上げた。

「キルアくん、ハンター試験っていうの、受けるの?」
「いや…あ、そう!ナマエが受けたらいいのにって思ってさ!」
「え、わたしに?!」
「そーそー、なんか難関らしくてさ、その試験。ナマエ兄貴に鍛えられてるみてーだから、腕試しにどうかなーと思って」

ペラペラと一気に捲し立てると、にこにこと取ってつけたような笑顔を見せるキルア。しかしナマエは申し込み書をじっと見ていて、なにも気付いていない。

「へぇ…ありがとう」
「まだ締め切りまで結構あるからさ、ゆっくり考えなよ。あ、オレが勧めたって兄貴に言うなよ!メイドに勧められたとか言えよ!」
「え、なんで?」
「なんでも!それよりさ、飯食おーぜ。腹減った。ナマエもう昼飯食った?」
「まだ…」
「よっしゃ決定な」

キルアがあまりに露骨に話題を変えたので、ナマエはそれ以上聞かないことにした。キルアは扉から頭を出してメイドに声をかけると、すぐ飯来るから!と言って戻ってきた。

「またゲームやる?」
「やる!」

キルアの言葉ににっこり笑うと、キルアもにっと笑った。やっといつもの調子に戻ったなぁ、と内心ほっとしながら、二人は昼食が運ばれてくるのを待った。



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