「し、失礼します!」

ドキドキでリビングの扉を開けると、まだ誰もいなかった。少しほっとして、ナマエは席に腰をおろす。イルミも無言で、ナマエの隣に座った。

「この部屋は初めてです」
「そうだっけ」
「はい!本当に広いお屋敷ですよね」
「普通じゃない?」

他愛もない話をして待っていると、扉が開いた。途端に緊張したナマエだったが、入ってきたのはキルアだった。

「おー、兄貴にナマエ、久しぶり」
「キルアくん!久しぶり!」

笑顔で片手を上げて入ってきたキルアに、ナマエは嬉しそうな顔をした。キルアとは、最初の特訓も入れてまだ数回しか会っていないので、久しぶりだ。

「あ、親父仕事が長引いたから、今日は帰らないって」
「ふーん」

大きな机に向かって歩きながら、キルアはイルミに言った。イルミは大して興味がなさそうに返す。

「席どこでもいーの?」
「いいよ」
「じゃーオレナマエの隣!」

ぴょんとナマエの横に座るキルアが可愛くて、ナマエは思わず頬が緩んだ。しかしそのとき再び扉が開き、ナマエはまた緊張する。

「母さん、カルト」
「こんばんは兄さま達…と、」
「あら!この方がイルミの言っていた方かしら!」
「あ、初めまして、ナマエです!」

入って来たのは、和服の可愛い子と、目になにか機械をつけているドレスの女性。イルミの呼び方からして、ドレスの女性はお母さん、和服の子はカルトと言うのだろうとナマエは考える。

「ナマエさんね、私キキョウと申しますのよ!見た感じあまりお強くはなさそうだけど?」
「鍛えてる」
「別にナマエはそんな弱くねーよ」

ナマエはガチガチになってしまい、ひたすらテーブルの上のお皿を見つめている。カルトはキルアの正面に、キキョウはさらにその隣に座ったので、ナマエとは向かい合わせになる。

「でもキル、ゾルディック家に嫁ぐ身なら並の強さではいけませんことよ?!」
「と、嫁ぐ?!」

突然聞こえた言葉に、ナマエは思わず顔を上げた。キキョウの機械と目が合う。

「ナマエさんはイルミの恋人なのでしょう?!」
「ち、ちが…」
「あら!ではどうしてイルミの部屋にいるのかしら?!」

それを言われると困る。ナマエは助けを求めるようにイルミを見るが、イルミは興味なさげに遠くを見ていた。仕方なく反対側のキルアに視線を向けると、苦笑いしている。

「あのさー、ナマエは兄貴の弟子らしいよ」
「なんでイルミに弟子が必死なのかしら?!」
「そんなん兄貴に聞けよ」

キキョウはキュインと音をたてイルミの方を見た。

「別に、拾っただけ」
「拾ったですって?!」
「拾った」
「拾ったってどこで?」
「庭」

イルミとキキョウの会話にキルアも加わった。カルトは黙ってナマエを見ている。

「まあ!じゃあナマエさんは門を開けて入ってくる腕力はお持ちなのね!いくつまで開いたのかしら!」
「い、いくつって…?」
「2つまで」
「え?!」
「そう!まあまあね!」

話の中心人物だというのに、全く話に入れていないナマエ。なにが2つなのかすらわからない。

「拷問には耐えられるのかしら?!毒は?!」
「拷問は知らない」
「毒はちょっとずつ慣れてきてるよな!」
「う、うん…」

次々と出てくる物騒な単語にナマエの頭はオーバーヒートしたらしい。キルアににっこりと話しかけられ、とりあえず頷いた。と、そこでまた扉が開き、太った男と小柄な老人が入ってくる。

「ブタくんにじぃちゃん。遅かったじゃん」
「おお悪かったの、キル」
「いきなりリビングで食事なんて言うからだろ!ゲーム中断してわざわざ来てやったんだぜ」

二人、ミルキとゼノが席につくと、メイド達がすぐに料理を運んできた。

「で、それがイル兄の女?」
「そうよミルキちゃん!」
「ふーん、変わった趣味してんな」
「ブタくんの趣味が特殊すぎんだっつの!」
「だから恋人では…!」

すでに家族の認識を修正することは無理らしい。

「い、イルミさん、わたしのことなんて言ったんですか?」
「今オレの部屋に一人住んでるからって」

イルミは平然と食事しながら答えた。間違っていないが、誤解されても仕方ない言い回しだ。ナマエは一つため息をついて、家族の言い合う声を聞きながら、黙って料理を食べ始めた。



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