「今日からとうとう、わたし達も二年生だね」
学校への道を歩きながら、なまえがつぶやいた。春の暖かい日差しや花の香りに心も躍るような今日、大海原中は始業式を迎えた。二、三年生にとって大きなイベントは、やはりクラス替えだろう。
「今年は誰と同じクラスかなぁ」
「まあ、わたし達はまた一緒かもね!」
「腐れ縁だもんな」
キャンの言葉に、なまえと音村が笑った。小学校から何度もクラスが一緒になっている、幼なじみの三人は、一年生の時も同じクラスだった。
「いいよな、お前らは学年同じだし」
楽しそうな三人を眺めていた綱海が、ぼそっと言う。
「綱海は誰とでもやってけるだろ」
「まあ、そうだけどさ」
「条介もサッカー部入ったらいいのに」
「いや、俺はサーフィンのが好きだからな!」
そこは譲れない、と言うように笑って見せる綱海に、他の三人も笑った。そうこうしている間に、大海原中の校舎が見えてくる。すでに登校時間ギリギリで、たくさんの生徒達がいる。三年生で下駄箱の場所が二年生と違う綱海は、クラスメイトを見つけて走って行った。
「はあ、式って面倒くさいな」
「仕方ないよ、学校だからさ」
「あ、あっちにクラス替えの割り振りが張り出されてるよ」
ブツブツ言っていたなまえと音村は、キャンの指した方を振り返った。人だかりのできた中心には、確かに旧クラスと出席番号の書かれた紙が貼ってある。
「んー、見えない…人が減るまで待つしかないかぁ」
「キャン見えるよ。ええと…なまえだけ2組だ」
「うそ!」
なまえが音村におんぶおんぶ、とせがむと、音村はおとなしく背中を差し出した。音村におんぶされ、人だかりの上からクラス替えの紙を覗いたなまえは、本当だー!と騒いだ。
「ちょっと、なまえ暴れないで!」
「あ、ごめん楽也…でもショックだなー」
「別に、小学校からずっと同じって訳でもないし、どうせ部活とか朝とか毎日会うだろ」
「そうだけどさ」
少し拗ねたなまえを、音村とキャンは苦笑いしながら慰めた。と、そこに、人だかりから離れたサッカー部員達が集まって来た。
「お、マネージャー何拗ねてんだ」
「うるさいな渡具知、別に拗ねてないよ」
渡具知を睨んだなまえの肩を、古謝がぽんと叩いた。
「俺、マネージャーと同じクラスだった」
「え、ほんと?」
「俺も、まただよ」
「今年も潜と一緒かー」
「文句あんの」
「ううん、知ってる人が一緒でよかった」
ようやくにっこり笑ったなまえ。
「これだけ部員がいて、三クラスしかないんだから、絶対一人は知り合いいるって」
「幹生!」
少し馬鹿にしたように言った安室を、謝花がたしなめる。安室はべ、と舌を出した。
「とりあえず、式始まるから体育館に移動しようよ」
キャンの一言で、騒いでいた部員達が回りを見る。いつの間にか人だかりは消え、廊下に残っているのは、サッカー部員以外に数人になってしまっていた。
「うわ、いつの間に」
「古謝、潜、一緒に行こ!」
「ああ」
「おー」
クラス別で並ぶため、なまえは古謝と平良と一緒に、体育館に向かって駆け出した。それに続く、他の部員達。一瞬遅れて走り出した東江は、少し寂しそうにつぶやいた。
「マネージャー、俺もクラス同じなんだけど…」
ドキドキクラス替え!