「夏休みだぁぁぁ!!!」

普段からハイテンションな大海原サッカー部であるが、一際うるさくなるのが今日、終業式の日だった。つまり、夏休み始まりの日である。部室まで待ちきれずグラウンドで叫びながらはしゃいでいるのは、赤嶺。中学生になって始めての夏休みを迎える彼はいつも以上に浮かれていた。

「赤嶺ウルセー」
「えー!嬉しくないスか平良先輩!」
「嬉しいけどお前はしゃぎすぎ」
「素直はいいことじゃないすか。ね、みょうじ先輩!」
「なんでわたしに言うのー」
「おお、素直が一番だ!夏休みサイコーー!」
「条介、赤嶺よりうるさい…」

グラウンドではしゃいでいた四人に、すでに着替え終わった音村が冷ややかな視線を向けた。

「明日から夏休みではしゃがずにいれる方がオカシイぜ、音村」
「おかしくないよ、明日からも毎日練習だよ」
「午前練の日もあるじゃないスか!平日に午後フリー!何しよー!」
「安次嶺は?」

平良の一言に、赤嶺のテンションが一気に落ちた。なまえが苦笑いする。

「ティナちゃん、この夏はハワイ行くって言ってたよ」
「安次嶺先輩がますます遠い…」
「はいはい、いいから早く着替えてこい赤嶺」
「おす…」

音村の言葉に肩を落としながら部室に向かう赤嶺。それに続く平良と綱海。

「なんだかんだ潜と赤嶺って仲いいよね」
「息が合うのかもな」

そんな後ろ姿を見ながら、なまえと音村は呟いた。

「何々?何の話?」
「あ、サンゴちゃん、安室」
「赤嶺と平良が仲良いって話だ」
「確かにね、平良ってすぐ文句言うけど面倒見いいから、赤嶺も宜保も懐いてるよね。だからディフェンスの連携はいいんだろうな」
「おい、俺を見ながら言うなよな」
「気にしてた?幹生」
「うるせぇぞサンゴ!」

お馴染みのやりとりに苦笑いする音村となまえ。

「俺はキーパーの腕磨いて、キーパーでスタメン狙うんだから、ディフェンスはいいんだよ!」
「強がっちゃって、綱海先輩が競う相手にならないくらい上手くなっちゃったのだって気にしてたの知ってる」
「〜!」

完全に詰まった安室の肩になまえがポンと手を置いた。

「安室負けるな!」
「おう!負けねぇし!」
「口では勝てないぞ」
「お前もうるせぇ音村!」
「なまえ、着替えましょ」
「あ、うん」

なまえは謝花にうながされ、音村と安室に手を振って部室に向かった。大海原サッカー部の部室は入り口が二つある。一つは広くて、男子更衣室兼みんなが集まれるスペースに繋がり、もう一つは女子三人の為の着替えスペースに繋がる。元々一つの大きな部室だったのを、ロッカーで二等分したのだ。三人の着替えスペースは狭いが綺麗に使われている。

「ね、なまえ。夏休みの予定立てた?」
「んー、あんまりなんにもないよ。部活部活だよ」
「まあ、だいたい一緒よね」
「家族でどっか旅行に行ったりする予定もないし、早く宿題終わらせないとなぁ」
「…じゃあなまえ、明日の練習のあと遊びに行こ!」
「行くー!」

きゃっきゃと盛り上がって話している間に着替えは終わり、グラウンドに戻る。強い日差しが海にキラキラ反射している。海の上の学校だからこそのこの景色は大海原中生の自慢である。

「あ、監督来てる」
「ほんとだ、早いね」
「明日から夏休みだぞー!!今日もテンション上げていけよー!!」
「イエーーーイ!!!」
「…一番テンション高いの、監督だね」
「綱海先輩も負けてないけど…」
「はああー、もうこうなったら乗るしかない!」
「あ、ちょ、なまえ…」
「夏休みいえーーーーい!!」

飛び跳ねながら監督達の輪に加わったなまえを見て、謝花も苦笑いしながら駆け出した。



夏が来た
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テーマ「人外ファンタジー」
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