夕方、部活が終わる時間帯。一度帰ったはずの綱海が学校に戻ってきたので、なまえ達三人と一緒に帰ることになった。なにかあったの、と聞く前に、綱海が口を開いた。

「なあ、お前ら円堂守って知ってるか?」

なまえと音村とキャンはきょとんとして綱海を見た。

「なんか、サッカーの強い学校のキャプテンらしいんだけどよ」
「なんで、いきなり?」
「いや、さっき会って…」
「えええええ?!円堂くんに?!」
「なんだ、知ってんのか?」
「当たり前じゃん!」
「お前らキョトンとしたから知らねーのかと思ったぜ」
「だって円堂守って、雷門中の円堂くんのことでしょう?」
「確かそんなこと言ってたな!」
「雷門て言えば、フットボールフロンティア優勝…て言っても条介はわからないか。でも今エイリア学園と戦ってる学校じゃない!」
「エイリア学園ってなんだっけ?」
「ニュース見なさい!」

話が逸れてしまったが、とにかく綱海以外の三人は、特になまえは、興奮していた。

「会ったってことは、雷門が沖縄に来てるってことでしょう?!ぜ、ぜひ、練習試合しなきゃ!」
「でもそれって、沖縄にエイリア学園が来るってことじゃないのか?」
「あ」

冷静さを取り戻した音村が、ふと気が付いて言った言葉に、なまえもはっとする。話についていけていなかった綱海が、ここでようやく話に参加した。

「なんか、炎のストライカーを探してるって言ってたな」
「それって絶対豪炎寺くんだ!」
「沖縄に豪炎寺くんがいるの?」
「会いたい!」
「なまえ意外とミーハーだね」
「一緒に特訓したいだけだよ!」
「なあ、」

盛り上がっている三人に聞こえるように、綱海が少し大きな声を出した。

「ん?」
「俺サッカー部入ろうかと思ってんだけど」
「………え?!」
「あんなに興味なかったのに、どうしたんだ?」
「今日円堂達とサッカーやってさ、それがスゲー楽しかったんだ!」

楽しそうに話す綱海に、三人はにやっと笑った。

「ようやく気付いたか!」
「監督にはわたしが言っとくから、明日から来なよ!」
「キャンがルール教えてあげようか?」
「サンキュー!」
「あとさ条介、円堂くん達と仲良くなったんなら、試合してくれないか頼んでみてよ!ずっと憧れだったんだー」
「おう!任せとけ!」
「やったー!あーもう、幸せ!今から楽しみ!」

目を輝かせて喜ぶなまえに、綱海も頬を綻ばせた。





翌日。大海原中サッカー部のユニフォーム姿の綱海は、キャラバンのメンバー達を連れて大海原中のグラウンドに来た。すでにユニフォームで待機していた大海原中サッカー部から歓声があがる。大海原の監督が瞳子監督に挨拶している間に、なまえは円堂の前に進み出た。

「初めまして円堂くん!あの雷門中と試合できるなんて本当に幸せ!今日はよろしくね」
「俺も大海原と試合できて嬉しいよ!ええと、君の名前は…」
「あ、わたし大海原中サッカー部のマネージャーのみょうじなまえです。なまえでいいよ」
「なまえか!よろしくな!」

ニカッと笑う円堂。なまえもにっこり笑い返し、二人は握手をした。円堂がメンバーの方に戻って作戦の話を始めたので、なまえも大海原メンバーの方に戻る。

「あああの雷門中の円堂くんと握手しちゃった!ご利益ありそう!」
「なまえ興奮しすぎだろ!」
「まあね!でも、試合は勝とうね!」
「イエ〜イ!」
「よし、それじゃあ、試合に出すメンバーだが」

監督がタイミングを見計らって言った。

「基本はいつものスタメンで、安室と綱海を入れ替える」
「えーっ!なんで俺!」
「綱海はディフェンスだって言うからな。ディフェンスで安室だけ必殺技に参加してないだろ?」
「だって俺元々キーパーだし!」
「だからいつもみたいに、入れ替えのキーパーな」

言い返せずへこむ安室を、謝花が慰めた。なまえも綱海の袖をぐいと引っ張った。最年長ということでそこには、キャプテンのバンドがついていた。

「条介、安室の代わりに入るんだから、頑張ってよ!」
「おう!任せろ!」
「ていうか、ほんとうにサッカーできるの?」
「まあ見てろって!」

にっと笑って見せた綱海。なまえは少し不安そうな顔で、グラウンドに走っていく綱海を見つめた。その背中を、音村が軽く叩く。

「大丈夫、綱海のことは俺が上手くやるよ。なまえはしっかり応援してて」
「楽也…!」

音村はヘッドホンをつけ直して、綱海の後を追った。なまえはみんなが整列したのを見てから、ベンチに入った。試合が始まる。


大海原中

雷門中
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