「エイリア学園だって」

ペンギーゴを物色していた音村に、なまえが声をかけた。なまえの視線は、店内に置かれたテレビに向けられている。スパイクを見ていた音村は、ヘッドホンをずらして、テレビを見た。

「ああ、あの、サッカーする宇宙人ってやつ」
「知ってる?」
「朝テレビで見た気がする」

なまえの隣に来てテレビを見つめる音村。画面には、無残に壊された中学校の校舎と、すごいスピードで飛び回る黒いサッカーボールが映っている。

「サッカーを何だと思ってるんだろうな」
「ほんと、ひどいよ」

憤慨しながらも、やっぱり人事なのか、二人の興味は他に移っていた。

「本土はやること激しいね」
「前にもなかったっけ、学校破壊するって」
「ああ、帝国学園」
「そうそう帝国!怖いねー」
「まあ、今はやってないみたいだけどな」
「そういえば帝国、FF負けちゃったよね」
「うん。今年の雷門はすごかった」

二人は思い返すように話し合った。毎年当然のように優勝していた帝国が敗れ、サッカー部は改めてFF優勝への士気が高まっていた。

「あー、雷門と練習試合できたらいいのに!」
「なまえは試合しないだろ」
「みんなが雷門とやってるとこを見たいの!それに、生で雷門のサッカー見たいし」
「確かに、試合できたら学ぶことはたくさんあるだろうな。でも、東京は遠いって」
「そうだよね、残念だなぁ。沖縄じゃあ、帝国とも、世宇子とも、試合できないね」
「帝国と世宇子は危ないだろ」

散々物色した後、なまえが部費で救急道具だけ買って、店を出た。土曜日の部活の帰り道、キャンは午後から友達と約束があるからと先に帰ったので、なまえと音村はたらたらと寄り道をしながら帰っていた。店の外はすでに夏のような暑さで、店内の冷房が恋しくなる。二人の家は隣同士で、ペンギーゴからは歩いて10分ほど。

「アイス食べたい!」
「俺財布忘れたから奢ってよなまえ」
「わたしも自分の財布持ってないんだ…」
「部費の財布と自分の財布分けてるの?」
「うん、部費のは監督からの支給品」

なまえは質素な青い財布を出して見せた。監督が適当なので、部費の管理は大体なまえがしているのだ。

「はー、家まで我慢か」
「そうでもないかも」
「ん?」

音村がニヤリと笑って見ていたのは、浜辺の方からサーフボードを担いで歩いて来る綱海。

「綱海ー」
「お、音村になまえ!部活の帰りか?」
「うん!ねえ条介、アイス奢って!」
「アイス?仕方ねぇなあ」

綱海がなまえの頭をがしがし撫でながら、もう片方の手で財布を開けた。

「え、いいの?」
「まあ、お前ら部活終わって疲れてるだろうしな!ガリガリ君でいいか?」
「条介さまーっ!」

綱海と音村は両側から綱海に抱き着いた。歩きにくいだろー、とか言いながら、綱海も楽しそうだ。





「そういえば条介はエイリア学園って知ってる?」

綱海の奢りのガリガリ君を食べながら、三人はまたノロノロと歩きだした。

「エイリア学園?なんだそりゃあ、外国の学校か?」
「やっぱり綱海は知らないか」
「なんだよその言い方!どうせサッカー強い、海外の学校とかじゃねーの」
「まあ、外国といえば、外国?」

いずれ沖縄にエイリア学園がやって来て戦うことになるとは、夢にも思ってもいない三人は、またくだらない話をしながら、家への道を歩いた。


エイリア学園が地球にやって来ました
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