欲していた眩い若草色は、赤黒い血や肉にまみれて、最早当初の輝きを失っていた。

手に入れてみれば、別段大したこともない。

つまらない愚鈍な緑に退屈して、ギルガメッシュはその双眸を早々と虚空へと放った。
もっとも、そんなぞんざいな扱いも、今更その元の持ち主には預かり知れぬことである。言ってしまえば当たり前だ。見える筈がないのだ。自身の両目を抉られて、地面に臥せったセイバーには。


発狂するほどの痛みの中ですら、己の誇りのためかセイバーは叫び声を上げていなかった。戯れに顎を捉え、無理矢理に顔を上げさせると、口元に寄せた指を噛まれた。
常ならばその食い縛られた白い歯の他に、鋭い眼光がこちらを刺してくる。
だが今は顔面の目があったはずの場所である孔からは、ひっきりなしに赤い鮮血が流れているだけだった。


その不恰好な姿に、完全なセイバーは既に永遠に喪われてしまったのだと気が付く。それと同時に、それをひどく残念に思っている自分がいることに気が付き、ギルガメッシュは心の底から自分で自分に驚いた。

ふむ、と考え深げに頷く。


「喜べ女。どうやら我は、思いの外お前を愛していたようだぞ?」


「…ッ!こ…のッ…下郎!」


だがもうそれももう飽きた。


うっすらと笑みを浮かべ、ギルガメッシュは尚も威勢を張る女の白く細い首に指をかけ、そのまま、そっと、場面は、暗転――



cri de coeur

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