目覚めは朝には少し早かった。

時計を見て起床までにまだ時間があったことを確認し、綺礼は乱れたベッドから体を起こして窓の外を見やった。
空はまだ薄暗い。どうやらまだ日は登っていないらしい。
しかし、やがて登りだすだろう。
ふっと、物思いに囚われる。

何故太陽は何度死んでも蘇ってしまうのか。

今は亡き父はこんな代わり映えもしない日の出を、いつでも決まって『美しい』と褒め称えたものだった。

――だが、私には全く美しい思えない。

やがて来る朝に気が重い。カーテンを締め切っても、どこかからか射し込むあの光。自分が破綻した人間だと、神の間に適さない人間だと否応なしに思い出させるあの輝き。太陽の、光。

憂鬱な気分に沈んでいると、突然、体が何かに捉えられた。
視界の端に映る、汚れたシーツの間から伸びたしなやかな長い腕。
この部屋には自分を含め二人しかいない。そのため、綺礼はその持ち主が簡単に分かった。

昨夜の同衾相手。英雄王ギルガメッシュ。

「朝が疎ましいか、綺礼」
全てを見通す赤い眼がすっと細まる。そのまま、ギルガメッシュの腕が、再び綺礼を汚れたベッドへと引き戻そうと動いた。
抗議に開いた口も、間髪入れずに唇によって塞がれる。
これ以上朝から無駄な体力を消耗するのも馬鹿馬鹿しく、綺礼は仕方なしに清潔さを失ったベッドの上に倒れこんだ。
小さな勝利に、ギルガメッシュの赤い唇が満足気に弧を描く。

「…一体何の用だギルガメッシュ?」

わざと聞こえるように大きく溜め息を吐くも、ギルガメッシュは一切気に留めなかった。
ふふん、と上機嫌で両腕で綺礼の頭を抱き締めて、そのまま自身の胸に押し付ける。

「…息苦しい」
「綺礼」
「早く離せ」
「太陽が嫌なら」


いくつだって我が落としてくれよう。


心底得意そうな男の声に眼を開けると、辺りにはただ暗闇が広がっているばかりだった。

Sun Sin Son
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