「俺さ、お前のこと、ライバルだって思ってたんだぜ」 静かに、だけどはっきりと、グリーンは言った。 「笑っちまうよな」 その話し方があまりにもグリーンらしくないから、まるでぼくの知らないグリーンが喋ってるみたいだった。そもそもぼくはグリーンのことをちゃんと知らなかったのかもしれない。 現にぼくはグリーンのこんな顔を初めて見たんだから。 「俺じゃお前に敵わねえのに」 今更気付くなんて馬鹿だよな。 そうやって全部無駄だったみたいに、今までぼくが大事にしてたものをグリーンが否定して、色々言い返す筈だったそれまで用意してた言葉をうやむやに消してしまった。 そうやってぼくは大事なことを何一つグリーンに言ってこなかった。ずっと一緒だったのはマサラにいた時だけで、別々に旅に出た。それなのにぼくはグリーンは何も言わなくても分かってくれるつもりでいたんだ。 そうやって、こんなに遠くなるまで気付かなかった。 「ぼくはもういかなくちゃ」 けどね、グリーン 「早く追い付いてきてね」 グリーンは一瞬泣きそうな顔になったけど、それでも待ってほしいとは言わなかった。 ぼくはもう振り向かずに走っていける。 :look back |