あまりに突然の死刑宣告。

視界いっぱいに舞う、色とりどりのオカズたち。

スローモーションで落ちて行く、色とりどりのそれら。

呆然と口を開けたまま、具が飛び散るぐしゃりという音を聞いた。

「両方とも毒です。あのメスども、勝ちにがっついてきましたね」

二つのお弁当をなぎはらった手もそのままに、にっこりと微笑むキャスター。

キャスターは可愛いなあ。

起こってしまったことのあまりの重大さに、脳は完全にショートしてしまっていた。

…えーっと落ち着こう。落ち着いて、これから生き延びる方法を考えるんだ!
そう、一体何がいけなかったんだろうか。
俺はただ、いつもみたいに(いつもって何か知らないけど)、普通に(普通って何か分からないけど)、何となく(これは分かる)、屋上で一人食事をとろうとしただけだったんだ。

ただ、そこに凛が来て…(『ぐ、偶然よ!たまたま通りかかっただけなんだからね!』)
時を置かずにラニも来て…(『あなたに…会いに来てしまいました』『なっ、な、なんですって?!』)

「べ、別にあんたのために作ったわけじゃないけど丁度作りすぎちゃったところだし、あんたが物欲しそうだからくれてやるわよ!」

「これを、あなたに。お口に合うと…良いのですが」

そう、全ては凛とラニの二人が俺にお弁当を持ってきてしまったところから始まってしまったのだ。



「アトラスの錬金術士として、オカズの錬成に失敗はありません」

淡々と語るようでいて、言葉に力を込めて語るラニ。

「あら、私だってこの道のハッカーとして失敗はないわよ?」

ラニの言葉に挑発するような高圧的な眼差しを向ける凛。
俺を挟んで火花を散らす二人。本当に燃えてるんじゃないかと思うくらいの熱気に、俺はただ恐れおののいていた。もしペナルティが無ければ、いっそ本当に決闘が始まってたんじゃないだろうか。

刹那、激しくぶつかり合っていた二つの視線に射すくめられた。あまりの恐怖に声も出ず、悲鳴すらもあげそこなった。硬直した体の背中にだらだらと汗が伝う。

「で、どっちがいいわけ?」
「どちらがいいですか?」

どちらの選択肢を選んでも待つのは明らかな死だ。正直、俺はどちらのお弁当が食べたいとかなんて抜きに……

「……両方とも食べたいです」

ひたすらに死亡フラグを折ることしか考えられなかった。

その後、今度はどちらのお弁当から食べるかでまた熱戦が始まりそうになったので、二人に感想を言うことを約束してマイルームに逃げ戻ってきたのだ。

そして二つの弁当を見るなりのキャスターの天晴れな平手である。どうやらこのサーヴァントは、魔術だけでなく肉体言語にも秀でているようだ。

大丈夫…電子でできてるっていうんなら、床に落ちたくらい……なんて希望も、俺の諦めの悪い視線に気がついたのか、キャスターによる床にぶちまけられた鮮やかなおかずの更なる蹂躙によって容赦なく踏みにじられた。

ぐりぐりと踏みにじる足もそのままに、腕を絡めてくるキャスター。

「ご主人さま、毒なんてよして」

見詰める目の琥珀に閉じこめられる。逃走を許さない、絶対的な甘さ。

「代わりに、はーい!良妻のカレーパンですよ〜!あーんしてくださいねー♪」

向日葵みたいな笑顔で、差し出されたカレーパンの中身は、果たして、

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TOXIC

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