「桜」

その声を聞いて、反射的に、失敗した!と思った。残念そうな、それでいて酷く悲しそうな声だった。もしかして、何か足りない物があったのだろうか。もしそうだったとしたら私ができる範囲なら何でもあげたいし、できなくったってどうにかしてあげたい。

「何ですか、先輩」
「…もう、止めろよ」

一体、どうしたんでしょうか?考えても、分からない。どうやら私は先輩を失望させる何かをしてしまったみたいだ。そんな顔をさせたかったわけじゃないのに。また失敗だ。愚図な私。いつだってそう。大嫌いな、私。

「早く、ここから出せ」

少し強く、先輩が言った。ああ、そのことでしたか。なぁんだ。ほっとして笑ったら涙が出た。どうやら先輩はまだそんな可能性の低い小さな望みにすがり付いてるらしい。可哀想で、可愛くって、愛しくって、正直笑える。笑った。ついでにまた涙が出た。可笑しいったら可笑しい。

「出て、一体どこに行くっていうんですか?」
「……」
「もう、みんな」

ここにいるのに。

そっと指でお腹をなぞる。大体のサーヴァントは魔力に変換してしまったりもしたけど、その他の概ねは傷付けずに体内に入れていた。そういえば、その中に姉さんもいたかもしれない。姉さん。ええっと、姉さんの名前は……何だったっけ?ああもう忘れちゃった。忘れるぐらいならきっと大したことじゃない。大丈夫。きっと、まだ。…一体、何が?
…まあ、いいや。私達は二人っきり。私には先輩がいる。先輩には私しかいない。それでいい。それでいいんだ。それだけで良かったんだってば!

「ねえ、先輩は、私のこと、好きですか?」

アハハ!そんなの、答えなんて分かりきってるのに、聞いてみるなんてあはははは!





馬鹿みたいに惨めだ。





:それでもまだ待っている
120311