すっわすーわにしーてあげる
 

すわさんからのメールに固まること数分。
手塚君からの電話に気付いて私は通話ボタンを押した。
「もももももしまっ」
『……? よく分からないが落ち着け』
「うん、ごめん………よし来た落ち着いた」
スーハー、と息を吸って吐いて落ち着くと手塚君がタイミングを見計らって話し掛けてくれた。
『どうしたんだ、先程よりも混乱しているみたいだが』
「あ、うん。……その、すわさんが私達に会いたいって」
『………!?』
あ、手塚君も動揺してる。
「手塚君、大丈夫?」
『…大丈夫だ、問題はない』
これ声が震えてるとか言わない方がいいよねうん。
「それじゃあいつ会うか決めようよ」
『そ、うだな。俺は部活がない日ならば大丈夫だ』
「オケオケ把握した、こっちの平気な日と合わせて考えてみるよ」
『ああ頼んだ』
って会話をしたのが一昨日。
「手塚君、すわさんと会うの緊張するね」
「そうだな…しかし、この人混みで見つかるのか?」
「そうだよね、すわさんは耳に五色のピアス付けてるから私達は分かるかもしれないけどすわさんは分からない気がする」
目印は青のリストバンドをした男女って教えてはみたけど…。
うん、無理じゃね?
「あの、すんません」
後ろから気怠そうな声が掛かる。
振り向くと目についたのはワックスで立たせた髪に五色のピアス。
……え、…え?
「やっぱり。零さんと刹さんですよね、はじめまして、すわっス」
「四天宝寺の財前か、」
「ええ、全国ぶりですわ手塚さん」
「え、知り合い?」
てことはテニス部の人?
「ああ、一応試合をしたことがある」
「あのときは蚊帳の外だったんで」
そう言った財前君(で良いのかは分からないけど)は私に視線を移した。
「すわ改めて財前光です。よろしゅう」
クールな人がまた増えた…!
何だかちょっと感動しつつ私も自己紹介をした。
「刹改め金代泉李です、よろしくね財前君」
「必要ないかもしれないが零改め手塚国光だ」
「二人とも年上なんでさん付けで呼ばせてもらいますわ」
自己紹介も終わって、私達は近くのカラオケに入ることにした。
「カラオケ、久々だなー」
本当さ、一人で来るのも気まずいからってなかなか来れないし。
「あ、何か頼みます?」
「あ、なら私鳥の軟骨頼む」
「では俺はフライドポテトを頼む」
「……何か今一気に手塚さんのイメージ変わりましたわ」
財前君の言葉に内心激しく同意した。
……でも、そこが手塚君の魅力だと思う!
グッと拳を握ると財前君から何だか残念なものを見るような目で見られた。
「……あ、俺は善哉で」
「あるの!?」
「客のニーズに応えるんがカラオケっスわ」
「そんなカラオケ聞いたことないよ!」
「…いや、もしかしたらあるかもしれないな」
「手塚君!?」
何かおかしなことを言ったか?と首を傾げる手塚君。
だからピンポイントにそんな萌えントをーっ!
いやもう手塚君が最近可愛くみえて仕方ないのは病気なの?
「チッ…善哉はないらしいんで俺もフライドポテトで」
財前君が注文し終わり、席に座って入れてきていたコーラを飲んだ。
因みに私はホワイトウォーターになっ〇ゃんリンゴを混ぜたもので手塚君は緑茶だ。
「じゃあ歌いながら話しましょう」
曲を選んで入れていく財前君。
「あー…何歌います?」
「何かデュエットで」
「それじゃあ適当に入れときますわ」
最初の曲が流れ始めるとマイクを持って財前君は歌い始めた。
「(凄い…音を正確に捉えてる)」
歌い方も個性があって聞いててワクワクしてくるし、感情が篭ってる。
「……ふう、次手塚さんデュエットしません?」
「ああ、いいだろう」
二人で歌い始めた手塚君と財前君。
……何て言うんだろう、引き込まれるって言えばいいんだろうか。
低音と高音が綺麗にハモってる。
財前君も歌ってみればいいのに。
「……じゃあ次は手塚さんと金代さんですわ」
「え?あ、うん」
急に声を掛けられて内心ドキリ、としつつマイクを受け取った。
私が女声パートだから…高音から低音まで幅が広い。
手塚君は女声パートを支える男声パート。
正直言うと手塚君と歌うのは二回目だからちゃんと歌えるか心配でしょうがない。
でも手塚君が真剣に歌って私をリードしてくれるからかのびのびと歌うことが出来た。
「ふう…ありがとう手塚君、リードしてくれて」
「いや、こちらこそ歌いがいがあった」
なんてお互いが言うと静かに私達が歌っているのを聞いていた財前君がぽつりと呟いた。
「……やっぱりっスわ」
「へ?」
「もしよかったらなんですけど、俺の次の新曲歌ってもらえません?」
まだまだ先になるとは思うんですが…、と付け足す財前君に私達は顔を見合わせた。
「本当に歌わせてもらっていいの?」
「ええ、…二人に歌ってもらいたいんで」
よろしゅうお願いします、と言った財前君に私と手塚君は頷いた。
「俺達でよかったら歌わせてもらおう」
「ホンマですか、ありがとうございます」
そのあとは歌いっぱなしだった。
途中で来た軟骨とフライドポテトを食べながら随分盛り上がった。





















「それじゃあ今日はありがとうございました」
こちらまで出て来てくれた財前君を駅まで送り、見送った。
「あ、またメールするんでそんときには頼んますわ」
最初から最後まで気怠そうな雰囲気を崩さなかった財前を思い返しながら手塚君と歩く。
「手塚君、楽しかったね」
「ああ、そうだな」
「……あ!そういえばやった?新サドスティク・エレジー」
「ああ。…まさかケビンがあのときにS魂を発揮するとは思わなかった」
「私もー、今までいじられキャラだったケビンの成長にビックリした」
この間一緒に買ったゲームの話をしながら私達は帰路についた。
手塚君ともっと仲良くなりたいな。
なんて考えながら手塚君を見る。
「……どうかしたのか」
その視線に気付いたのか手塚君は首を傾げた。
「え?いやー何だか嬉しくて」
「嬉しい?とは…」
「ほら、周りでこうやって話せる人っていなかったし」
「俺も、金代と親友になれて嬉しく思っている」
ずきゅん。
口元を緩ませる笑みいただきました。
あああああもう本当かっこ可愛いな手塚君!
「そうだ、これ」
「? 何だこれは」
「家にあったものなんだけど、よかったらあげるよ。まだ開けてなかったから」
小さな紙袋を渡すと手塚君は私に開けていいか尋ねるとその場で開け始めた。
「これは……本当に貰っていいのか?」
「うん、」
対になっているシンプルな根付け。
手塚君に渡したものはテニス部のレギュラージャージと同じ色だったから調度良いかと思った。
「金代の携帯に付いているものと色違いか」
「……あ、嫌だったら付けないでいいよ!」
「いや大切に使わせてもらう」
迷惑だったかもしれないな、と思ってそう伝えると首を横に振りながらそう言った。
「ありがとう」
「ああ」
紙袋に戻しながら手塚君は言った。
「それではまた明日学校で」
「あ、うん。また送ってもらっちゃったね…ありがとう。また明日」
お礼と挨拶をして、私は手塚君を見送った。



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