聖書と刹
 

俺は白石蔵ノ介。
通称『蔵リン』で、大阪の四天宝寺でこの夏まで部長をやっとったんや。
とまあ、何で自分で心ん中だけで自己紹介しとるかと言うと。
「うっそ、マジやばくなぁい?」
「お兄さんアタシらと遊ぼうよー」
逆ナンされとります。
アカン、大阪の娘らも怖いけど東京の娘らも怖いわ…!
絶頂(エクスタシー)の俺が苦手なモンは逆ナン。
それから女の子や。
よう考えてみ、逆ナンする女の子らのあのぎらついた目、そして過剰な化粧に見せまくりの肌…!
ぜんっぜん絶頂やない!
三次元の女の子らに希望を見出だせなくなってしもうた俺は、二次元に走った。
……ああ、ホンマええよな。
二次元の女の子らはあんなケバい子もおらへんし、ものごっつうええ感じに絶頂感じんねん。
薄桜鬼の千鶴ちゃんホンマ俺の嫁。
あんな初々しい子がええ、ホンマ三次元怖いわ。
気づけば俺は三次元の女の子を嫌悪しとった。
化粧もあんましてへん香水もほんのり香る程度の娘なら近づかれても平気なんやけど…うん、化粧むっちゃしとる娘らは駄目や。
鳥肌立つ。
近づく言うても二メートル以内に来られたら叫ぶんやけどな。
まあ仕方ないやろ、体質やし。
完璧目指しとるけど、流石にこれは治らんかった。
「あー…スマンけど、俺人待っとんねん」
適当にごまかす…て言うても、ホンマのことなんやけどな…!
ああ、早う来てや謙也…あ、やっぱお前来よってもヘタレやから無理やなうん。
「そんな堅いこと言わないでさー、それまででいいから、ね?」
「ていうかお兄さん関西弁だー関西の人?」
ああああそれ以上近寄んなや…っ。
もう、無理や…!
「あ、ごめんごめん待った?」
不意に、中性的な声が掛かった。
見ると、そこにはパーカーを羽織って帽子を被っとるやつがおった。
…え、誰や?
「もう、何人の連れに話し掛けてんのさ。ほら、早く行って行って」
俺が呆然としとる間に、そいつは慣れた様子で女の子らを追い払った。
「……大丈夫だった?」
そいつは声をがらりと変えて俺に声を掛けた。
…あれ、何処かで聞いたような声やな。
何処でやったっけ、か…あ。
「て、刹!?」
「へ、お兄さん知ってんの!?」
え、ちゅうことは刹なんやろ?
つまり…女、……!?
「あ、うわ…ちょストップやストップ!」
「え、あ、うん?何が」
首傾げとるけどとりあえず動かんていてくれるみたいやから、俺は落ち着いて息を吐いた。
「…スマンな、助けてもろたんに。ちょっと女の子が苦手やねん」
「(ちょっと!?絶対嘘だ)へ、へえ…そうなんだ」
あー…でもどうなんやろ。
この子化粧もしとらんし、シャンプーのええ匂いしとる。
性格もイケイケやないみたいだし…ん?
あれ、これ俺の理想の女の子やないか?
いや落ち着くんや俺。
そう考えて何度大変な目にあったか…。
覚えとらん訳やないやろ。
ああ、ホンマ三次元の女の子怖いわ…!
「あー…じゃあ私行くよ、人待たせてるし(何か考え込んでるしいいよね、手塚君待たせちゃってるし。……あれ、むしろ手塚君に逆ナンの危機来てんじゃね?)」
え、普通にスルーて。
男に興味ないんかな、刹って。
……一応見た目がええ自覚はあるんや。
バレンタインとかホンマ鬼門やから。
「それじゃああんまり変な人に絡まれないようにしてね(必殺営業用スマイル!)」
…あ、笑うと結構可愛いな…あれ、千鶴?
何かあの笑い方千鶴やないか?
リアル千鶴…やと…!
いや待て、落ち着くんや。
千鶴はゲームの中におる、健気で真っ直ぐで精神的に強いんや。
だからちゃう、刹は千鶴やない千鶴やないんや…!
「お、おお。それじゃあおおきにな」
「いえいえー、またどっかで会えたら飲み物奢ってくれたらチャラにしてやろう!」
何キャラやねん。
今、刹が女の子に見えんかったで。
偉そうに言って刹は走り去った。
………うんごめんな千鶴。
千鶴は一人やもんな、うっかり刹の笑顔で千鶴やと思ってしもうたけどちゃうよな。
…ていうか、俺刹と会ったんに会話らしいこと全くしとらんな…。
結構好きな歌い手さんなんに。
そもそも帽子被っとったからあんまり顔の作り分からんかった。
名前も知らんからこれっきりやろ。
「謙也来たらからかい倒さんとな」
俺はそう呟き、調度声を出しながら走って来た謙也へと目を向けた。



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